インドと日本のスタートアップ支援プログラム
インドは長らく数多くのスタートアップの拠点として知られてきましたが、近年では日本のスタートアップ・エコシステムも大きく成長しています。[1]両国間の国際的な協力が深化するにつれ、スタートアップが相互の国のプログラムを活用できる機会も増え続けています。本記事では、インドのスタートアップを国内外で支援するさまざまなプログラムや取り組みを紹介するとともに、インドと日本のスタートアップ間の連携を促進する日本のプログラムや取り組みについても概説します。
インドのスタートアップ支援プログラム
① Startup India Initiative(インド商工省)
2016年にインド商工省(MCI)が開始した「Startup India イニシアティブ」は、イノベーション、起業家精神、雇用創出を促進するための旗艦プログラムです。このプログラムでは、税制優遇措置、コンプライアンスの簡素化、専用のファンド・オブ・ファンズ[2]を通じた資金調達の機会などが提供されます。また、インキュベーション支援、知的財産保護、グローバル市場へのアクセス支援を通じて、スタートアップの成長と成功を支援しています。このイニシアティブの下で実施されるプログラムは、「Startup India チーム」によって管理され、商工省の産業・国内貿易促進局(DPIIT)に報告されます。
② Startup20 Engagement Group(インド政府)
インドが2023年のG20議長国を務める中で、「Startup20 エンゲージメント・グループ」が設立され、イノベーション主導の起業家精神を促進するための国際的な枠組みを構築することを目的としています。このプラットフォームでは、スタートアップ、投資家、政策立案者、業界リーダー間の対話を促進し、共通の課題への対応や国境を越えた協力の促進、G20の優先事項(持続可能性や包括的な経済成長)との整合性を図っています。
Startup20 ではスタートアップ企業に対し、以下のような参画機会が提供されています。
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- Startup20 と提携し、イニシアティブに協力する
- Startup20 イベントで自社の製品を展示する
- ローカルStartup20xイベントを主催する
- Startup20 の3つのタスクフォース(「基盤・アライアンス・タスクフォース」「ファイナンス・タスクフォース」「インクルージョン&サステナビリティ・タスクフォース」)のメンバーになる
③ 地域/州政府の取り組み(カルナータカ州、デリーNCR、マハラシュトラ州)
インドの州や地域では、カルナータカ州、マハラシュトラ州、デリー首都圏(NCR)がスタートアップの主要拠点として台頭しており、特定の政策や支援制度が整っています。カルナータカ州の「ELEVATE」プログラムでは資金提供やメンタリングを行い、マハラシュトラ州は「マハラシュトラ州イノベーション協会」を通じて、補助金、インキュベーター、ビジネス規制の緩和などを提供しています。デリー首都圏の「クラスター・イノベーション・センター」は、学術研究と実践的応用を結び付ける役割を果たしており、「デリースタートアップ政策2019」では、無担保融資、専門家によるメンタリング、学生起業家向け支援が行われています。
日本のスタートアップ支援プログラム
① SDGsビジネス共創ラボ(つながるラボ)(JICA)
「SDGsビジネス共創ラボ(つながるラボ)」は、国際協力機構(JICA)が推進する取り組みで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったビジネスの創出を目的としています。このラボでは、日本のスタートアップと世界のステークホルダーとのパートナーシップを促進し、メンタリング、資金調達、革新的なビジネスモデルを通じた社会・環境課題の解決を支援しています。
JICAインドつながるラボの具体的な活動には、以下が含まれます。
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- 日本企業とインドのソーシャルエンタープライズとのビジネスマッチング支援
- ビジネスマッチング、インパクト投資、CSR活動に関する各種イベントの開催
- 日本企業とインドのソーシャルエンタープライズの成功事例の提供
② 日印スタートアップハブ(日本経済産業省・インド商工省)
日本の経済産業省(METI)とインドの商工省(MCI)が共同で設立した「日印スタートアップハブ」は、両国のスタートアップ間の協力を深めるためのプラットフォームです。このハブでは、知識共有、投資機会、共同開発プロジェクトを促進し、イノベーションの推進と経済関係の強化を図っています。
③ JETROのプログラム・イニシアティブ
日本貿易振興機構(JETRO)も、スタートアップの国際協力を支援するさまざまな取り組みを行っています。JETROのプログラムでは、資金提供、メンタリング、グローバルネットワーキングの機会が提供され、日本のスタートアップと海外企業(インドを含む)との連携を支援する「J-Bridge」などのプログラムが用意されています。また、インドのスタートアップが日本市場に参入するための支援として、「日印イノベーション・ピッチイベント」などの活動も行っています。
インドと日本の両国が提供するスタートアップ支援プログラムにより、スタートアップの成長や海外展開の機会がますます増えています。こうした取り組みによって、両国のスタートアップ・エコシステムはより活気に満ち、包括的なものになりつつあります。イースクエアでは、日本企業の海外進出、特にインド市場への展開を継続的に調査しており、海外展開をお考えの皆様をご支援しています。
[1] "Japan Startup Ecosystem," Ministry of Economy, Trade and Industry, June 2024
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/global_promotion.pdf
[2] 「ファンド・オブ・ファンズ」、ウィキペディア、2025年2月28日取得
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