本稿では、3回に分けて「SDGsの視点を取り入れた中小企業の海外展開ステップ~ 社会課題解決型ビジネスの創出~」というテーマで、中小企業が海外市場で社会課題解決型ビジネスを展開するための具体的なステップについて解説していきます。

 

近年、社会課題解決型ビジネスは企業活動の新しい柱として注目を集めています。その背景には、世界的な課題である貧困や環境問題が深刻化する一方で、企業が持続可能な開発を実現しつつ利益を追求する新しい経済モデルの必要性が高まっていることがあります。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)は、これらの課題を解決するための道標を提供し、世界中の企業に新たな事業機会を提示しています。

 

なぜ、社会課題解決型ビジネスに取り組むのか?

社会課題解決型ビジネスは、新興国や途上国をはじめとする地域社会が直面する貧困、教育の欠如、気候変動、医療インフラの不足などの問題を解決しながら、持続可能な成長を目指すビジネスモデルです。このアプローチには以下の目的があります。

 

1.次なる中間層の取り込み

新興国や途上国では、所得水準が向上しつつあり、将来的に購買力を持つ中間層が拡大することが予測されています。これらの潜在的な顧客層を先行して開拓することで、企業の長期的な成長を促進できます。

2.事業機会の創出

社会課題には未解決のニーズが多く存在し、これらに対応するソリューションを提供することは、新しい市場を開拓するビジネスチャンスにつながります。特に「食料と農業」「都市」「エネルギーと材料」「健康と福祉」の分野では、2030年までに12兆ドルの市場機会があるとされています。

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出典 ビジネスと持続可能な開発委員会(Business and Sustainable Development Commission)

3.イノベーションの創出

社会課題を解決するために、新しい発想や技術の開発が必要です。このプロセスで生まれたイノベーションは、企業の競争力を強化し、国内外の市場で活用される可能性があります(リバースイノベーションなど)。

4.社会的責任の履行

社会課題解決型ビジネスへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、ブランド価値の向上や投資家からの評価向上につながります。

社会課題解決型ビジネス実施における心構え

社会課題解決型ビジネスを成功させるためには、従来のビジネスモデルとは異なる考え方が求められます。一般的な新規事業の立ち上げでは、事前に詳細な計画を作成することが重視されますが、社会課題解決型ビジネスでは次のようなプロセスが重要です。

1.仮説の設定

完璧な計画ではなく、大枠の仮説を立てることが重要です。現地の社会課題を把握し、解決策の仮説を構築します。

2.現場での検証

仮説を現地で検証し、現地の人々との直接的な対話や観察を通じて新たな情報を得ます。

3.仮説の修正

現場での検証結果を基に仮説を修正して再度検証します。

 

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このプロセスを短期間で繰り返し、仮説をブラッシュアップしていきます。完璧を追求するのではなく、現地の発展速度に合わせた迅速な対応が求められます。

 

社会課題解決型ビジネス成功に導くパートナーとの連携の必要性

社会課題解決型ビジネスを実現するためには、適切なパートナーとの連携が欠かせません。以下は主なパートナーの例とその役割です。

1.公的機関

JICAや国連機関などの公的機関は、資金支援や現地の情報提供、プロジェクトの信頼性向上に寄与します。

2.NGOや現地組織

現地の社会課題に精通したNGOや非営利団体は、地域のネットワーク構築や現地コミュニティとの信頼関係の形成を支援します。

3.企業

同業他社や異業種との協働により、資源の共有や事業のスケールアップが可能となります。

 

これらのパートナーとの協働を通じて、社会課題解決型ビジネスはより効果的かつ持続可能な形で展開できます。

今回の第一部では、企業が社会課題解決型ビジネスを実施する目的やその心構えなどについて説明してきました。次回は、「社会課題解決型ビジネス実践のステップ」について説明したいと思います。

 

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