J-Partnership事業を活用した海外展開事例(インド進出の事例)
J-Partnership事業(J-Partnership 製品・サービス開発等支援事業補助金※) は、経済産業省が実施する企業の海外展開を支援する事業です。本事業では、新興国・開発途上国の社会課題解決につながる事業の製品・サービスの開発や実証・評価など、事業開発に係る費用に補助金を提供しています。本稿では、本事業の概要ならびに本事業を活用したインドにおける海外展開事例を紹介します。
※経済産業省 令和5年度「技術協力活用型・新興市場開拓事業費補助金(社会課題解決型国際行同事業(製品・サービス開発等支援事業)
J-Partnership事業の概要
J-Partnership事業は、平成27年~令和3年まで「飛びだせJapan!」事業として実施されていましたが、令和4年度からは、「J-Partnership」と名称を変えて企業の海外展開の支援を行っています。令和5年度の募集要項によると、本事業の主な内容は以下のとおりです。
補助対象事業者
当該国のニーズに合致した製品・サービスを有しているものの、該当国での事業経験や現地ネットワーク不足等の理由により、自社のみでの事業開発のハードルが高く、補助事業による支援を必要としている企業
また、以下の3点を満たした企業を特に募集しています。
1)新興国 ・開発途上国 の社会課題を解決し、新たなビジネスを作っていく企業
2)現地パートナーと共に事業拡大できるビジネスプランを持つ企業
3)グローバルな事業展開に強い熱意を持つ企業
対象国
対象地域は、経済協力開発機構(OECD )の開発援助委員会作成「援助受取国・地域リスト」(DACリスト)に掲載の 新興国・開発途上国のうち、 ASEAN (カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)、モンゴル及び中国を除く国です。なお、令和5年度の募集では、特にアフリカでの事業を重点募集していました。
補助金額
中堅・中小企業は1社あたり最大1,500万円とし、大企業は1社あたり最大2,500万円
補助率
補助対象経費のうち、中堅・中小企業は 2/3 、大企業は 1 /3
その他の事業化支援
本事業では、補助金の供与だけでなく、現地政府・民間企業とのネットワーク形成も支援内容に含まれています。現地の経済産業省関係機関、開発途上国支援を実施する独立行政法人、UNIDO(国際連合工業開発機関)などの支援も受けられる可能性があります。
過去の支援実績
飛び出せ Japan!(平成 27 年度~令和 3 年度)
https://www.icnet.co.jp/news/tobidase/
J-Partnership(令和4年、5年)
https://j-partnership.go.jp/
J-Partnership事業を活用した海外展開事例(日印をつなぐ建設人材還流プラットフォーム「oyakata」の構築事業)
ここからは、J-Partnership事業を活用した海外展開事例をご紹介します。
アイティップス株式会社は、名古屋に本社を構えるスタートアップ企業です。日本の建築職人が有する技能を実践的な研修を通じてインド人材に移転し、技能を習得した人材を日本のゼネコン等に紹介する建設人材のマッチングプラットフォーム「oyakata」を運営しています。本サービスの特徴は①インドでそだてる(日本人技術者による技術指導、現地日系建設現場での実践教育、日本式ものづくり教育)、②アプリでつながる(職人の所有資格・適正度の情報公開、アプリを通じたマッチング)、③日本ではたらく(採用~入社、入社後のサポート)となっています。
日本の人材不足をインド人材が救う!「oyakata」紹介動画
本サービスの開発の背景には、日本とインドのそれぞれが抱える建設業界の課題を両国の強みを生かして解決したいとの同社創業者のクマール氏(代表取締役社長)の強い想いがあります。
インドでは、高度な建設技術を持つ職人が不足しており、これが工事の遅延や漏水などの問題を引き起こしています。この技術不足による経済的損失は、年間約8兆円に達すると推定されています。さらに、人口が14億人を超えるインドは、2023年には中国を上回り世界最多の人口国になる見込みですが、雇用の創出が人口増加に追いついておらず、特に15〜24歳の若者の失業率は24%という高い水準にあります。
一方、日本では高齢化と人口減少の影響で労働力が不足しており、特に建設業界は深刻な影響を受けています。2030年までに建設業では約23万人の職人が不足すると予測され、有効求人倍率は5.47倍(2023年10月の建設・採掘従事者)にも達しています。
そこで、インドの技術不足に起因する建設品質の課題と若者の失業率の課題を解決しつつ、日本の労働力不足の解決につなげるサービスとして、「oyakata」が誕生しました。
アイティップス社は、令和5年度のJ-Partnership事業に採択されています。これは、「oyakata」が本スキームの趣旨である新興国・開発途上国の社会課題解決につながる事業の製品・サービスであると認められた部分にあると考えられます。また、アプリを活用し、日本とインドをつなぐユニークな製品・サービスを使ったビジネスプランを有していたことも評価されました。さらに、同社代表のクマール氏の課題解決に対する強い熱意も大きかったと思われます。
同事業の申請に当たっては、スキームの選定、申請内容の検討、申請書の作成・提出までを、イースクエアがご支援しています。
同社は、J-Partnership事業を活用し、開発した「oyakata」の現地化を推進しています。その主な活動は、研修プログラム・教材開発、訓練校の運営パートナー候補の選定、研修の全国への普及方法の検討、日本側のネットワーク開拓です。
同社によると、本スキームを使うメリットとして、調査やサービス開発に係る費用の補填、経済産業省等が持つネットワーク、外部人材による調査等の実務支援があるとしています。また、今後、他の公的スキームや追加の資金調達をする際にも、本スキームへの採択実績が影響するとしています。
現地での実習の様子
資金面だけではない補助金活用のメリット
ここまで、日本のスタートアップ企業による、J-Partnership事業の活用事例をご紹介してきました。
中小企業やスタートアップ企業は、経営資源が限られる中で海外展開や事業開発を進めていくことが多いでしょう。しかし、本事業のような補助金(公的スキーム)を活用することで、資金的な支援が得られるだけではなく、ネットワーク、外部人材をフルに活用することができ、独力での取り組みに比べて事業立ち上げを加速することができます。
イースクエアでは、海外展開や事業開発に活用できる公的スキームの選定から申請、実施、報告書作成までを一気通貫で支援しています。もし、海外展開や事業開発で公的スキームの活用にご興味がある方は、ぜひ、イースクエアまでご一報ください。
中小企業の海外展開を強力にバックアップします
進出先選定、市場調査、実現可能性調査(F/S)、公的機関の支援活用など、事業の立ち上げをワンストップでご支援します。 海外展開にご関心がある方はお気軽にお問い合わせください。