背景:インドの汚水処理の現状と課題

インドでは、トイレ普及率の低さや依然として多くの人々が野外排泄をしている現状があり、インド政府としては、衛生環境の改善を重要な政策課題の一つとして挙げています。2014年に誕生したモディ政権下では、その一環として「Swachh Bharat MissionSBM)(クリーン・インディア・ミッション)」によるトイレの設置や衛生啓発活動を推進しています。

汚水処理施設の現状としては、都市部における汚水処理対策は進んできており、都市人口約1.4億人は集中型汚水処理施設(下水道)に接続しています。また、約1.6億人は分散型汚水処理施設(セプティックタンク、汲み取り式トイレ等)を利用しており、インドで発生する汚水全体の約13%は、何らかの汚水処理対策が実施されています。

しかし、これらの汚水処理施設の普及の遅れや汚泥処理システム・施設の機能不全・不足により、未処理の汚水・汚泥の土壌・河川・湖沼への流入に起因した水質汚染が発生し、この汚染が引き金となり感染病の蔓延、下痢症の増加等の健康問題が深刻化しています。

大成工業株式会社とTaisei Soil SystemTSS)の概要

イースクエアが支援する大成工業株式会社(以下、「大成工業」)は、鳥取県の建設会社で、管工事業、水道施設事業、浄化槽の販売・施工・維持管理などを行っています。

大成工業の主力製品である環境配慮型汚水処理施設のTSSは全国の500か所以上で施工実績がある環境配慮型トイレです。主な設置場所は、下水道に接続できない山岳地域の施設や公園、高速道路の料金所やパーキングエリアなどです。

TSSの概要を以下に記載します。

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出典:大成工業株式会社ホームページ、TSS無放流処理装置カタログ(2017/05/15更新)

インドでのJICA民間連携事業(案件化調査および普及実証ビジネス化事業)の実施と結果

大成工業は、TSS事業の拡大のため、経済成長と人口増加による市場拡大の背景に多くの社会課題を抱えるインドへの進出を計画することになりました。そこで、独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」)が実施する民間連携事業を活用したインド進出が有効であると考え、TSSの普及によるインドの汚水処理の課題解決を目指して、案件化調査に応募しました。

その後、案件化調査に採択され、20166月~20179月にかけて実施しました。同調査では、インド各地でTSS設置のニーズの確認と類似製品の市場調査を実施しました。その結果、TSSのニーズが高いことが確認でき、ウッタル・プラデーシュ州のバラナシ市とムザファルナガル市でパイロット事業としてTSSの設置に適した場所を1か所ずつ特定しました。

その結果を受けて、TSSのパイロット事業実施と普及のために、普及実証ビジネス化事業に応募して採択されました。20186月から20242月にかけて、ウッタル・プラデーシュ州のバラナシ市とムザファルナガル市にパイロット事業として1基ずつTSSを設置して実証事業を行いました。

これらの調査および実証事業を通じて、インドでもTSSによる汚水処理が正常に稼働することが確認できました。また、現地の政府機関等からもTSSの普及により、下水道に接続できない地域で、無放流かつ維持管理が容易な分散型汚水処理が可能になるため、インドが抱える汚水処理の課題解決に非常に有効であると高評価を得ています。

一方で、これらの調査で分かったTSSの現地普及の課題としては、設置にかかるコストがあります。よって、引き続き、現地生産を可能にして、導入コストを抑える方法の検討を継続することとなりました。

JICA民間連携事業完了後の事業展開:鳥取県海外展開牽引企業創出補助金「②プロジェクト連携型外需獲得事業」を活用した市場調査の実施

JICA民間連携事業を通じて得られた現地での普及の課題である設置にかかるコスト削減の課題等を受けて、現地サプライヤー等のさらなる調査の必要性が出てきました。そこで、地元の鳥取県庁に相談したところ、「鳥取県海外展開牽引企業創出補助金」というものがあることを知り、応募することになりました。その結果、交付決定を受け、20242月から8月にかけて調査を実施します。

インドでは、一定の条件を満たす企業に対して、会社法によりCSR活動に資金を拠出する義務*があります。そこで、大成工業はTSSのさらなる普及を目指して、同補助金を活用し、現地企業のCSR資金を活用したTSS普及の可能性に関する市場調査を実施します。具体的には、CSR活動としてTSSの導入に興味がある現地日系企業の調査を行います。また、TSSの現地化を目的に、TSSの現地生産の可能性を調査する予定としており、現地進出に向けた取り組みを進めていく予定です。

*インドでのCSR資金拠出に関する詳細は、こちらをご確認ください。

イースクエアでは、本稿でご紹介したような公的補助金を活用した海外展開の支援を実施しています。ご不明な点は気軽にお問い合わせください。

参考:「鳥取県海外展開牽引企業創出補助金」の概要

鳥取県海外展開牽引企業創出補助金.png

出典:鳥取県庁とりねっと、鳥取県海外展開牽引企業創出補助金

〈参考情報〉
JICA案件化調査(中小企業支援型)環境配慮型トイレの導入にかかる案件化調査 業務完了報告書
http://libopac.jica.go.jp/images/report/12290813_01.pdf、http://libopac.jica.go.jp/images/report/12290813_02.pdf
 

JICA普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)環境配慮型トイレの導入にかかる普及・実証事業 概要
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/826/F171011_summary.pdf

大成工業株式会社 ホームページ、TSS無放流処理装置カタログ(2017/05/15更新)
https://www.taisei-kg.co.jp/pdf/tss_ct.pdf

鳥取県海外展開牽引企業創出補助金
https://www.pref.tottori.lg.jp/312657.htm

イースクエアでは、インド進出や現地パートナーの発掘などのご支援も行っておりますので、ご不明な点は気軽にお問い合わせください。

イースクエアのインド進出・展開支援

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弊社は、2010年よりインドを始めとする開発途上国・新興国での日本企業のビジネス展開を市場調査、製品・技術開発(ローカライゼーション)、現地パートナーの発掘、テスト販売、ビジネスモデル構築・改善、公的機関などの補助金・助成金など申請など、お客様のニーズに合ったサポートをご提供します。インドでの多数のプロジェクト経験に加え、様々な民間企業でのビジネス経験を有する弊社コンサルタントのノウハウや現地ネットワークをフル活用し、企業様のインドでのビジネス展開をオーダーメイドでご支援します。

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