インドは世界第1位の人口を抱え、その農業分野は国の経済において非常に重要な役割を果たしています。しかしながら、インドの農業は長年にわたり、効率性の低さ、生産性の停滞、気候変動による影響など、さまざまな課題に直面してきました。こうした背景を受け、インドでは近年、農業分野に技術革新をもたらすアグリテック(AgriTech)スタートアップが急速に成長しています。

  1. インドのアグリテック市場の概要

インド経済の基幹を担う農業産業は、インドのGDPの約16.5%を占めています。インドの農業市場は2022年に4,359億米ドルの価値があり、2028年には5,808.2億米ドルに増加すると予測されており、2023年から2028年の間の年平均成長率は約4.9%にも達すると見込まれています。2022年には、インドには約450社のアグリテック・スタートアップ企業があり、その数は前年比で25%増加しています。

出典:The Times of Indiahttps://timesofindia.indiatimes.com/blogs/voices/indias-agritech-sector-the-current-scenario-trends-and-budget-implications/

  1. アグリテック・スタートアップの主要分野

インドのアグリテック・スタートアップは、多岐にわたる分野でサービスを提供しています。特に注目される分野としては、以下の3つが挙げられます。

スマート農業

スマート農業は、データ分析やIoTセンサー、ドローン技術などを駆使して、農作業を効率化する手法です。例えば、Ninjacart は、農家と市場を直接結ぶプラットフォームを提供し、流通コストの削減と新鮮な農産物の供給を実現しています 。

デジタルマーケットプレイスとサプライチェーン管理

インドの農業は、中間業者が多い複雑なサプライチェーン構造を持っています。これを改善するために、デジタルマーケットプレイスを提供するスタートアップが登場しています。例えば、DeHaat は、農家向けに肥料や種子、農機具の販売、農産物の販売支援、農業技術のコンサルティングを提供するプラットフォームです 。

③気候変動対応と持続可能性

インドの農業は近年気候変動の影響を大きく受けており、持続可能な農業技術の需要が高まっています。Ecozen Solutions は、太陽光を利用した冷蔵庫や、農家が使用するエネルギー効率の高い機器を提供し、農産物の保存と品質保持をサポートしています 。

  1. 日本企業へのビジネスチャンス

インドのアグリテック市場は、日本企業にとってビジネスチャンスになる可能性があります。可能性のある進出形態として、以下の3つが挙げられます。

技術提供とパートナーシップ

日本の先進的な農業技術や機器は、インドの農業分野に貢献できる可能性があります。日本のアグリテック企業がスマート農業技術やロボティクス、農業用ドローンなどの分野で技術や機器を提供し、インドのアグリテック・スタートアップと協業することで、新しい市場を開拓することができる可能性があります。

②CSRプロジェクトの活用

インドでは、2013年の会社法(The Companies Act, 2013)の改正により、企業のCSR (企業の社会的責任)活動が義務化され、農業振興のプロジェクトに対しても現地企業からCSR資金が拠出されています。インドに進出する日本企業は、このCSR資金を活用して、農業技術の普及を支援するプロジェクトを実施することができる可能性があります。これにより、インドの農業生産性を向上させると同時に、地域社会への貢献を通じて地域との関係強化も図ることができます。

③投資機会の探求

インドのアグリテック・スタートアップは、多くの場合、成長資金を必要としています。日本の大手企業やベンチャーキャピタルは、これらのスタートアップへの投資を通じて、将来的な利益を得るとともに、インド市場への足がかりを築くことができます。

 

  1. 日本企業の進出事例

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ここからは、日本のアグリテック企業の進出事例を紹介します。サグリ株式会社は、人工衛星データ等を活用し、農薬や肥料の最適な蒔き方や収穫時期などの情報を提供することで、農業を最適化するサービスを展開しています。主な事業内容として、リモートセンシング技術を活用し、農作物の生育状態や土壌の分析を行い、データに基づいた農業支援サービスを展開しています。また、人工知能(AI)や機械学習を活用して、農業生産の効率化や最適化を目指しています。インドでは、20199月にベンガルールに現地法人Sagri Bengaluru Pvt.を設立し、人工衛星の技術を応用したマイクロファイナンス事業を行っています。

サグリは、本事業を推進するために、現地に本社を置くベンチャー企業とMOUを締結し、事業を加速させています。具体的には、当該企業が有する農家ネットワーク(約 5 万人の農家とつながり、農業と流通のネットワークを有している)を通じて、(農地の区画面積の情報、収穫量を予測した情報、気候データから解析した天災や気候変動リスクの情報等)を入手・解析し、収穫量の予測やリスク対応の方法などを示せるようにすることで、マイクロファイナンスの融資を通りやすくなるように支援しています。また、農家はその資金を活用し、農家は農業資材を購入できるようになり、収穫した農作物を販売するところまでを支援できるようにしています。

出典:JETROhttps://www.jetro.go.jp/case_study/2019/sagri.html

 

インドのアグリテックスタートアップは、技術革新と市場の成長を背景に、今後ますます注目を集める分野です。日本企業にとって、この市場は単なる投資対象にとどまらず、技術提供やパートナーシップ、CSRプロジェクトを通じて、インドとの強固なビジネス関係を構築する絶好の機会となる可能性があります。

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