アフリカでビジネスをしようと考える際、懸念として多くいただく声が「治安」です。どんなにビジネス的なニーズがあったとしても、治安が悪いと命を落とす可能性もありますし、クーデターなどが発生するとビジネスが出来ない状況に陥ることもあります。そのため、事前にアフリカの治安レベルを把握しておくことが重要となります。

今回は、経済平和研究所(The Institute of Economic and PeaceIEP)という機関が出しているGlobal Peace Index(世界平和度指数) 2023年度版を参考に、アフリカの国別治安の良さランキングと、上位三か国の概要をお伝えします。また、上位3位にはランクインしていないものの、アフリカビジネス進出支援をしてきた弊社独自の注目国を3カ国ご紹介し、実際に行える安全対策についてもお伝えします。

アフリカの治安ランキング

まずは、IEPが毎年出しているGlobal Peace Index2023年版を基に治安ランキングをご紹介します。本レポートは「安全・安心」「国内・国際紛争」「軍事化」の3つのカテゴリから23項目にわたって163か国(うちアフリカは50カ国)を分析し算出しています。数値が低いほど治安が良いとされています。参考までに、日本は世界で8位、GPIスコアは1.336となっています。

下表がアフリカの国別治安ランキングです。

※GPIスコアは小数点第3位以下を四捨五入しています

アフリカ治安1.png

アフリカの国別治安ランキング
GPI2023を基にイースクエアが作成

次に、上位3位について、経済的視点での概要をお伝えします。

3位 シエラレオネ

GDP:約42億米ドル(2021年:世銀)

人口:約814万人(2021年:世銀)

主要産業:鉱業(ダイヤモンド等)、農業(コーヒー、ココア)

主要貿易品目:(2021ITC

輸出:鉱物、木材、貴石、貴金属等

輸入:食糧(米)、車両・車両部品、機械類

主要貿易相手国:(2021ITC

輸出:中国、ベルギー、ドイツ、ルーマニア、オランダ

輸入:中国、インド、トルコ、ベルギー、米国    

在留邦人数:30人(202110月現在)

2位 ボツワナ

GDP:175.1億米ドル(2022年:世銀)

人口:263万人(2022年:世銀)

主要産業:農業(ソルガム、メイズ)、畜産(牛、羊)、鉱業(ダイヤモンド、銅、石炭)、工業(繊維製品、食品加工)

主要貿易品目:(2022年:ボツワナ統計局)

輸出:ダイヤモンド、銅、機械・電気機器

輸入:ダイヤモンド、燃油、食料等

主要貿易相手国:(2022年:UN Comtrade

輸出:UAE、ベルギー、インド、南アフリカ

輸入:南アフリカ、ナミビア、ベルギー、インド

在留邦人数:66人(202212月現在)

1位 モーリシャス

GDP:129億米ドル(2022年:世銀)

人口:126.2万人(2022年:世銀)

主要産業:EPZ(輸出貿易地区)における繊維工業や砂糖生産等、金融業、観光

主要貿易品目:(2022年: ITC

輸出:肉・魚加工品、砂糖、繊維・衣料品

輸入:石油、自動車、電子機械部品

主要貿易相手国:(2022年: ITC

輸出:南アフリカ、フランス、英国、米国

輸入:中国、インド、南アフリカ、UAE

在留邦人数:66人(202210月現在)

ビジネスのしやすさを考慮した注目国について

上記3国はGPIの評価で治安が良いとはされているものの、ビジネスの市場規模やニーズなどで考えるとなかなかビジネスを行うのは簡単ではないというのが筆者の見解です。例えばシエラレオネのGDPは約6,300億円で、熊本県の10分の1ほどしかありません。この国で大きな規模のビジネスを行うことは簡単ではないでしょう。

以下は、治安を考慮した上で、筆者が独自におすすめする国3カ国をご紹介します。

注目国①ガーナ(第4位)

GDP:775.94億米ドル(2021年:世銀)

人口:約3,283万人(2021年:世銀)

主要産業:農業(カカオ豆)、鉱業(貴金属、非鉄金属、石油)

主要貿易品目:(2021年:ITC

輸出:金、石油、カカオ豆、ナッツ類

輸入:機械類、自動車類

主要貿易相手国:(2021年:ITC

輸出:スイス、米国、UAE、インド、中国

輸入:中国、インド、オランダ、米国、UAE

在留邦人数:272人(202210月現在)

注目理由:ガーナは公的債務の問題があるもの、GDP10兆円を超えており、アフリカの中では比較的大きなマーケットを持っています。また、公用語が英語であることもコミュニケーションの点でビジネスのしやすさに繋がります。そして、日本人にはお馴染みのチョコレートの原料であるカカオやナッツ類なども豊富に取れるため、これらを製品化して国内外で販売するという事業の可能性もあります。最近ではMAAHA chocolate(マーハチョコレート)というチョコレートブランドを展開するMpraeso合同会社なども進出しています。

〈参考情報〉
Business Insider Japan、バレンタインチョコの裏側──ガーナにチョコレート工場を建設した、25歳女性起業家「原点は無力さ」【MAAHA CHOCOLATE・田口愛】
https://www.businessinsider.jp/post-282375

Mpraeso合同会社(MAAHA chocolate
https://maaha-chocolate.shop/

注目国➁セネガル(第5位)

GDP:276.8億米ドル(2022年:世銀)

人口:1,732万人(2022年:世銀)

主要産業:農業(落花生、粟、綿花)、漁業(まぐろ、かつお、えび、たこ)

主要貿易品目:(2022年:ITC

輸出:鉱物燃料・石油製品、天然又は養殖パール、貴石又は半貴石、魚介類

輸入:鉱物燃料・石油製品、穀物、原子炉・ボイラー・機械器具、鉄鋼製品

主要貿易相手国:(2022年:ITC

輸出:マリ、インド、スイス、中国

輸入:中国、フランス、インド、EU

在留邦人数:168人(202210月現在)

注目理由:セネガルは2035年までに新興工業国入りを目指し、西アフリカ最大規模の経済特区の開発も進めています。この経済特区では最長25年にわたる優遇措置が受けられるため、ビジネスの始めやすさは高いと言えます。公用語がフランス語であることがコミュニケーションの点で懸念ではあるものの、GoogleMicrosoftなどが西アフリカの拠点としてセネガルに拠点を持つこと、フランス語圏でもっともIT産業が発展しているとも言われていることなどから、テック系ベンチャーの可能性もあります。近年では株式会社シュークルキューブジャポンがアフリカの未電化地域に、電気とネット通信を提供する事業をスタートし、関西電力グループのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)から資金調達をし、ビジネス化に向けた実証事業をおこなっています。

〈参考情報〉
PR TIMES、シュークルキューブジャポン、関西電力グループ「合同会社K4 Ventures」等からの第三者割当てによる資金調達を実施
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000044874.html

シュークルキューブジャポン、TUMIQUI (ツミキ)事業
https://www.sucrecube.co.jp/tumiqui/

注目国③ルワンダ(第17位)

GDP:101.2億ドル(2019年:世銀)

人口:1,263万人(2019年:世銀)

主要産業:農業(コーヒー、茶等)

主要貿易品目:(2019年:UNCOMTRADE

輸出:金、石油、茶、コーヒー、錫

輸入:石油、金、通信機材、薬剤、粗糖

主要貿易相手国:(2019年:UNCOMTRADE

輸出:コンゴ民主共和国、アラブ首長国連邦、ウガンダ、スイス、パキスタン

輸入:中国、インド、ケニア、タンザニア、アラブ首長国連邦

在留邦人数:171人(201910月現在)

注目理由:GPIのランキングは高くありませんが、筆者の経験上ルワンダはアフリカで最も治安の良い国の一つであると感じます。また、オンライン上で法人設立許可証を取れたり資本金が不要だったりとビジネスの始めやすさも非常に高いです。内陸国で国土が小さいという地理的不利な要素はありますが、現大統領ポール・カガメ氏は、強権的との批判はあるもののアフリカ屈指の改革派で、上述したオンラインでの簡易的な法人設立システムを確立したり、優秀なIT人材や起業家を育てるためにアフリカ唯一のカーネギーメロン大学分校の設立を実現したりと、特にIT産業でのビジネスの可能性に注目しています。近年ではWiredIn Japanがオフショア開発事業を展開しています。

〈参考情報〉
JBpress、先駆者が語る、ルワンダでオフショア開発をする理由
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46961

WiredIn Japan | アフリカ・ルワンダ・ITオフショア開発
https://www.wiredin.rw/ja/

安全対策

アフリカにおいて比較的治安の良い国を選んだとしても、最低限の安全対策は必須です。まずは外務省が運営する「海外安全ホームページ」を参考に、安全対策マニュアルやその国の最新の治安状況を確認するようにしましょう。

また、可能であれば、すでに現地に行ったことのある方や実際に住んでいる方にコンタクトを取り、現地の治安状況や安全対策について確認するのも非常に重要です。

〈参考情報〉
外務省、海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/

おわりに

アフリカは、2050年には世界の人口の4分の1を占めると言われていたり、国がそれぞれのポテンシャルを活かすような経済政策を推進していたり、今後大きな経済成長の可能性がありますが、一方で治安面では不安定な国も多いため、GPIのような指標を参考に進出国を選んでいくこと、また、どんな国を選んだとしても安全対策はしっかり行うことが重要です。

イースクエアのアフリカ進出・展開支援

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弊社は、2010年よりアフリカを始めとする開発途上国・新興国での日本企業のビジネス展開を市場調査、製品・技術開発(ローカライゼーション)、現地パートナーの発掘、テスト販売、ビジネスモデル構築・改善、公的機関などの補助金・助成金など申請など、お客様のニーズに合ったサポートをご提供します。アフリカでの多数のプロジェクト経験に加え、様々な民間企業でのビジネス経験を有する弊社コンサルタントのノウハウや現地ネットワークをフル活用し、企業様のアフリカでのビジネス展開をオーダーメイドでご支援します。

ご興味がある方はお気軽に以下よりお問い合わせください。

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