Fabrication Labo(Fab Lab:ファブラボ)は、3Dプリンターやレーザーカッター、CNC(コンピュータ数値制御) 工作機械などのデジタル製造機器を備え、プロトタイピングや製品開発を行うための施設です。個人や小規模なチームが、創造的なアイデアを実際に形にする場として世界中で普及が進んでいます。

インドでもこのFab Labの導入が広がりつつあり、教育、スタートアップ、イノベーションの分野で特に活発です。インドのFab Labは、アイデアや製品を試作するために多くの人々に活用されています。

この記事では、インドのFab Labについて概要や特徴、事例をご紹介します。

1. 教育機関との連携

インドのFab Labの多くは、教育機関や工学系大学と提携して設立されています。特に、デジタルものづくりや技術革新を学生に教えるための施設として機能しています。インド工科大学(IIT)や他の工業系大学では、Fab Labをカリキュラムの一部として活用し、次世代のエンジニアやデザイナーに実践的な経験を提供しています。

2. スタートアップとイノベーションの促進

インドのスタートアップ・エコシステムが急速に成長している中で、Fab Labもプロトタイプの製作や製品開発を支援する場所として注目されています。特に、バンガロールやプネーなどの都市では、Fab Labを活用して新しい製品やサービスを生み出そうとするスタートアップが増加しています。

3. 政府やNGOの支援

いくつかのFab Labは、政府やNGOの支援を受けて地方のコミュニティにも展開されています。これにより、都市部だけでなく、農村地域にもデジタル製造技術が普及する動きが見られます。例えば、地方の学校や村にFab Labを設置し、技術教育や小規模な製造活動をサポートするプロジェクトが存在します。

4. インド国内のFab Labの数

具体的な数は変動していますが、Fab Foundation(ファブラボの世界的なネットワークを運営する団体)のデータによれば、現在、インド国内に所在し稼働しているFab Lab61か所[1]になっています。これらの施設は主に大都市圏に集中していますが、農村地域にも拡大しつつあります。

5. Fab Labが盛んな地域

バンガロールやプネー、ムンバイなどのテクノロジーハブでは、Fab Labが積極的に利用されています。これらの都市は、スタートアップやイノベーションエコシステムが発展しているため、プロトタイピングや小ロット生産の需要が高い状況です。

6. 大学連携によるFab Lab の事例

KIIT-TBI Fab Lab[2](オリッサ州ブバネシュワールにあるKIITテクノロジービジネスインキュベーターのFab Lab)は、インド政府科学技術省(DST)の支援を受けた施設です。この施設はNIDHI[3]プログラムの一環として設立され、スタートアップや個人が新製品やプロトタイプを開発するためのプラットフォームを提供しています。KIIT-TIBは、KIIT(カリンガ工業技術大学)との連携で同大学のキャンパス内に設置されており、これまで450社以上の新興企業をインキュベートし、そのうち180社以上が卒業しています。

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Fab Labでは、3Dプリンター、レーザーカッター、CNCミリング、PCB設計ツールなど、さまざまな最先端のデジタル製造機器を備えています。これにより、ユーザーは最小限のトレーニングで、自分のアイデアを形にすることが可能です。さらに、このラボはグローバルなFab Labネットワークにもつながっており、国内外のイノベーターと知識を共有できる環境を整えています。

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KIIT-TBI Fab Labの外観

Fab Lab内、3Dプリンターの設備等

KIIT-TBI Fab Labは健康技術や農業技術、バイオテクノロジー分野におけるスタートアップを数多く支援しており、特にプロトタイプ開発の面で重要な役割を果たしています。また、3Dプリンティングやバイオメディカルデバイス開発に関するワークショップやトレーニングプログラムも定期的に開催しています。

また、日本の中小企業やスタートアップ企業もインドのFab Labと連携することは可能です。KIIT-TBIへのインタビューを実施したところ、これまでに、海外のスタートアップ企業がFab Labと連携してプロトタイプを開発し、自社事業の開発に取り組んだ事例があることがわかりました。KIIT-TBIでは、海外のスタートアップ企業等にもFab Labを無償で開放しており、活用する企業は、自社のプロトタイプ開発に係るコストのみを負担すれば、設備や専門家の意見などももらいながら自社事業等の開発に取り組むことができます。

まとめ

インドのFab Labは、いまだ発展途上の段階ではありますが、イノベーションの分野で重要な役割を果たしつつあります。特に、教育機関やスタートアップとの連携を通じて、技術革新の基盤を支える施設として今後も拡大する可能性があります。上記で示したように、日本の中小企業やスタートアップ企業も現地のFab Labとの連携を通じて自社事業の開発やイノベーションに繋げられる可能性があります。

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