第2部: 海外展開のステップ1・2 - 現地理解と仮説作成
先日掲載した第1部 では、社会課題解決型ビジネスの必要性とその基本的な考え方について解説しました。第2部では、中小企業が海外展開を進めるうえで必要となる4つのステップのうち、ステップ1「現地理解」とステップ2「仮説作成」について詳しく紹介します。
社会課題解決型ビジネスは、あらかじめ整備された市場ではなく、情報が限られた地域での展開が前提となることが多く、従来のマーケティング戦略とは異なるアプローチが求められます。そのため、事前に入手できる情報を最大限に活用して現地のニーズを把握し、仮説ベースでビジネスモデルを構築していくプロセスが極めて重要です。
本章では、進出の目的を明確にした上で、信頼性のある情報源をもとに現地ニーズを探り、初期仮説を構築するまでの一連のプロセスを解説していきます。
ステップ1:進出の目的と現地ニーズの理解
社会課題解決型ビジネスの第一歩として重要なのは、自社がなぜ海外に進出するのか、そして進出先となる国・地域のニーズは何かを明確にすることです。この段階では、主観的な期待に基づく判断ではなく、客観的な情報を収集し、戦略的に方向性を定める必要があります。
進出の目的は企業ごとに異なりますが、例えば以下のような目的が考えられます:
- 新規市場の開拓
- 生産コストの削減
- 取引先からの要請
- 海外人材の活用
- 社会課題に対する新規ビジネスの創出
これらの目的を明確にすることで、以降の仮説設計や現地調査の方向性が定まります。
次に、現地のニーズや社会課題を把握する必要があります。その際には以下のような手法が有効です。
- 国際的な社会課題の把握 SDGsの17目標や国際機関のレポートは、対象国における共通の課題を知るための参考情報として有用です。
- 公的機関の情報活用 日本の外務省が発行する「ODA国別データブック」やJETROの「海外ビジネス情報」などを活用することで、対象地域の開発ニーズや経済状況を把握できます。
- デスクトップ・リサーチ オンラインでの文献調査により、対象国の業界動向、消費者行動、インフラ整備状況などを広く収集できます。
- 地域特性の把握 地域ごとに社会課題の種類や深刻度は異なります。都市部と農村部、先住民族との関係性、宗教や慣習など、文化的背景も含めた多角的な理解が重要です。
ステップ2:仮説の作成とビジネスモデルの構築
現地の情報をもとに、次に取り組むべきは「仮説の構築」です。ここでは、実際の製品やサービスをどう設計・提供するかについて、大枠のビジネスモデルを立てていきます。
ビジネスモデル作成のフレームワークとして有効なのが、「ビジネスモデル・キャンバス」です。このツールを活用することで、以下の9つの要素に沿って事業全体を俯瞰できます。
事業のバリューチェーンの作成
次に、ビジネスモデル・キャンバスの9つの項目を活用して、事業のバリューチェーン概念図を作成し、事業を「見える化」します。その際、事業を「商流」「物流」「金流」のポイントでまとめると全体像がわかりやすくなります。
社会課題解決型ビジネスに特有の視点
その上で、9つの項目と概念図を見ながら、どのように社会的価値を事業に取り込み、共通の価値を創り出せるかを考えてみます。仮説構築時には、通常の収益モデルに加えて「社会課題をどう解決するか」という視点が不可欠です。例えば、次のような観点での検討が求められます:
- 雇用の創出と現地住民のスキル向上
- 基礎インフラ(電力、水、衛生)の提供
- 医療や教育へのアクセス向上
- 現地生産・現地消費による経済循環の強化
このように、社会的価値と経済的価値を両立させる構想を練ることで、持続可能かつ地域に根ざしたビジネスモデルの実現が可能になります。
今回ご紹介した第2部では、現地を正しく理解するための情報収集と、それに基づく仮説構築の方法について解説しました。続く第3部では、本章で構築した仮説をもとに現地での実地調査を行い、実際のニーズとの適合性を検証するプロセスを解説します。現地調査の準備、ステークホルダーとの対話、ヒアリングの実施方法、そして得られた情報をもとにビジネスモデルを再構築する一連の流れを取り上げ、より実践的な海外展開のステップへとつなげていきます。
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