こんにちは。イースクエア代表の本木啓生です。

5月にニューヨークで開催された興味深いイベントに参加してきました。
CSV (クリエイティング・シェアードバリュー)に関する最先端の情報が集ま
る2日間の「シェアードバリュー・サミット」です。

今回5回目となるシェアードバリュー・サミットの基調講演で登壇したハーバ
ード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授は、CSVをCSRの延長線で
考えるのではなく、競争戦略の一環として位置付けるべきであるというメッセ
ージを熱っぽく語っていました。

ポーターの言う戦略は、「最高を目指す競争」ではなく、「独自性を目指す競
争」を意味しています。つまり、顧客に対して自社ならではの価値提案(バリ
ュー・プロポジション)を行い、他社からは容易に模倣されないバリュー・チ
ェーンを作り出し、何をやって何をやらないかという取捨選択を行うことです。

戦略の要諦は「選択」することであり、何でもやりますと言うのは戦略ではな
い。さらに、戦略は企業だけのものではなく、NGOにも政府にも必要な考え方
だというのがポーターの主張です。

CSVは、事業の妨げとなったり、次なる事業機会につながる可能性のある環境・
社会課題に着目し、自社ならではの価値提案の中に、これらの課題への解決策
を組み込んでいくことを意味しています。そのことにより、自らの利益を生み
出しつつ、環境・社会課題の解決に寄与することが可能となります。また、事
業の中に組み込むことで、限られた「CSR予算」の中で活動するのではなく、
継続的にスケールアップを図ることができるようになります。

今回のシェアードバリュー・サミットは、セオリーに関する議論を超え、より
具体的な実践が強調されたものになっていて、先進的に取り組む企業や財団の
トップなどが自らの戦略や実践を披露し、また、テーマごとに分かれたグルー
プ討議では世界各国からの参加者が入り乱れて熱い意見交換がされました。

問題意識を共有する世界の仲間と力を合わせることで、課題が山積みの現代社
会において、企業が貢献できる潜在力は極めて大きいと改めて勇気づけられま
した。

なお、ポーターの基調講演を含め、シェアードバリュー・サミットの動画は下
記シェアードバリュー・イニシアティブのWebサイトで見ることができます。
http://sharedvalue.org/video-recap-shared-value-leadership-summit-2015-business-its-best


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◇◆ 目次
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〔1〕注目CSRニュース -
「ハーシー、パーム油のサプライチェーン調査結果を公表」

〔2〕イースクエアのホームページをリニューアル

〔3〕米「サステナブル・ブランズ15」参加報告

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〔1〕注目CSRニュース -
「ハーシー、パーム油のサプライチェーン調査結果を公表」
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このコーナーでは、企業のCSR担当者向け情報サイト、「CSRコンパス」
http://www.csr-compass.jp
から注目ニュースをピックアップしてご紹介します。

今回取り上げるニュースは、「ハーシー、パーム油のサプライチェーン調査結
果を公表」です。

------<CSRコンパス5月のニュースから転載>--------------------------

米国の大手チョコレート製造会社、ザ・ハーシー・カンパニー(以下ハーシー
社)は、パーム油のサプライチェーンに関する追跡調査の第一フェーズの結果
を公表した。NGOのThe Forest Trust (TFT)との協働のもと行われた本調査
により、同社にパーム油およびパーム核油を供給する搾油工場の94%以上が判
明した。

主要な調査結果として、南アジア(1,235)および中央アメリカ(11)の2地域
に位置する合計1,200以上の搾油工場からパーム油の供給があり、ハーシー社
の3ヶ国13工場(アメリカ(9工場)、メキシコ(2工場)、中国(2工場))で
利用されていることが報告された。

同社のグローバル・コモディティ担当副社長は、「サプライヤーと協働して、
厳格な新方針とサプライヤー行動規範を満たすために、今回の情報を活用して
いく。もし、これらの過程を通して、パーム油供給のサプライチェーンにて何
か課題が見られた場合、是正するために迅速に動くつもりだ。」と述べている。

本調査は、同社が2014年に表明した、「責任ある追跡可能なパーム油の調達に
対するコミットメント」の一環であり、すでに同社の全てのパーム油サプライ
ヤーに対して、新たに、包括的なパーム油調達に関する方針を定めている。
調査結果は、ハーシー社が責任ある原料調達目標を達成するために、パーム油
サプライヤーからどういったレベルでの協力を得ることが必要かを明確にする
際に役立てられている。

なお、ハーシー社は搾油工場レベルでのマッピングを終え、第二フェーズとな
るプランテーションレベルまで遡ってのサプライチェーンマッピングを始めて
おり、2016年中に完了する予定としている。

------<転載ここまで>------------------------------------------------

今回は多くの人が口にしたことがある、大手チョコレートメーカーのハーシー
の話題です。

ハーシーは、2011年にRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加入し、
2014年までに自社が調達するパーム油を100%RSPOの認証付きにすることを発
表していました。一方、グリーンピースなどのNGOはRSPO認証付きのパーム油
を購入するだけでは森林破壊に加担していないことを証明するには不十分だと
して、サプライチェーンまで遡って確認することを求めていました。

今回のハーシーの発表では、「同社にパーム油およびパーム核油を供給する搾
油工場の94%以上が判明」ということで、全ての調査が終わったわけではあり
ませんが、100%のトレーサビリティ確保に向けて大きな前進と言えるでしょう。

合計1,200以上の搾油工場を特定したとのことですが、ハーシーが大手企業と言
えどもここまで大規模な調査は単独では難しかったでしょう。また、残り6%
と言えども、大手の調査は一通り終わり、今後より調査に手間のかかる小規模
事業者が残っていることが予想されます。

ニュースにある通り、ハーシーはThe Forest Trust (TFT)※というサプライ
チェーンのサステナビリティを専門にするNGOと共同して調査を行っています。
TFTは1999年に設立され、世界20カ所近くに事務所を持つ国際NGOです。同社の
パートナーには食品業界に限らず大手企業が名を連ねています。農産物にせよ
金属にせよ、サプライチェーンは世界に広がっています。

サプライチェーンのサステナビリティ確保への関心が高まる中、こういった外
部の専門家との協働がますます重要になってくるでしょう。

※TFTのホームページ
http://www.tft-earth.org/


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〔2〕イースクエアのホームページをリニューアル
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おかげさまでイースクエアは2000年の設立から15年が経ちました。この節目に
このたびホームページをリニューアルしました。
https://www.e-squareinc.com/

今回のリニューアルの大きな特徴は、イースクエアのご支援内容の4つの柱の
「CSR経営支援」「教育・社内浸透」「海外展開・事業開発」「企業ネットワ
ーク」を中心に構成を組み替えたことです。

また、各種支援内容のページに詳細説明や具体的な事例を追加することで、支
援内容がよりわかりやすくなるよう心掛けました。

さらに、「ライブラリ」のページを設け、イースクエアが発行するレポート、
CSR関連ニュース、注目テーマ、メールマガジンなどの情報を集約し、公開情
報が一覧できるようにしました。今後は本ページを通して、よりタイムリーで
有益な情報を提供していきます。

「生命力溢れる豊かな社会」に向け、実質的で意味のあるお手伝いをしていき
たいという想いは設立当初より変わっていません。より良い未来に向け、新し
いホームページが多くの皆さまのお役に立つことを願っています。(早乙女)


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〔3〕米「サステナブル・ブランズ15」参加報告
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米国のサステナブル・ブランズ(Sustainable Brands)というイベントをご存
知でしょうか。サステナビリティとビジネスをテーマにして2007年に始まった
イベントです。サステナビリティに取り組んでいる企業、NGO/NPO、シンクタ
ンク、コンサルティング会社などの人々が集い、プレゼンテーションやワーク
ショップを通じて語り合い、学び合う大イベントです。

今年の「サステナブル・ブランズ15」には32カ国から約1,300人が米サンディ
エゴの会場に集まりました。6月1日から4日間開催された会合に参加してきま
したので簡単にご報告します。

※「サステナブル・ブランズ15」のホームページ
http://events.sustainablebrands.com/sb15sd/

今年のテーマは「HOW NOW」。従来、何をすべきかを考え試行錯誤をしてきた
けれど、今やどのようにして大きな変革を起こすかが課題である、というもの
です。環境・資源問題、人口問題はもはや未来の問題ではなく、現実のリスク
であることが共有されました。

この社会を変革し、明るい未来を目指すために、力を合わせて取り組もう、と
いうことで「コラボレーション」が1つのキーワードでした。例えば、ウォル
マートが主導して、現在10社が「クローズド・ループ・ファンド」という約1
億ドルの基金を設立し、資源回収のシステムを構築するための資金を自治体や
事業者に貸し付けるという取り組みも始まっています。

企業同士だけではなく、企業とNPOなどの様々なコラボレーションにより、新
しいビジネスモデルを実現したり、斬新な社会貢献を実施したりしている事例
がいくつも取り上げられました。

その他、興味深い話題としては、
・マーケティング部門とサステナビリティ部門の溝を埋めるための方法
・企業の目的(purpose)の重要性
・ソーシャルメディアを活用した新たなビジネスモデルや社会貢献
・2000年以降に成人となったミレニアル世代と言われる若者の消費行動や従業
 員としての特徴
・従業員の意識向上
・サプライチェーン上での課題と対応策
など、幅広い話題が取り上げられました。

私は今回、CSRコンパスのニュースでも取り上げたことのある先進企業のCEOや
サステナビリティ責任者のプレゼンテーションを聞き、ワークショップで意見
を交わし、起業家のコンテストで斬新なアイディアに触れ、展示ブースで様々
な活動を知り、ミニセミナーに参加するなどして、様々な人やアイディアと出
会いました。

この会合は、世界各国に広がっており、サンディエゴが最大規模ですが、ロン
ドン、リオデジャネイロ、ブエノスアイレス、クアラルンプール、ボストンで
も開催される予定です。

今こそ変革が必要な時です。一緒に知恵を絞り、行動しましょう。そのヒント
が満載の、熱気あふれるイベントです。来年は、ぜひ一緒に参加しませんか?
ご関心のある方にはご案内をお送りしますので、お知らせください。(大島)


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【編集後記】
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今年のサステナブル・ブランズの会場で上映されて拍手喝采を浴びていた動画
がこちらだそうです。YouTubeでの再生回数は100万回を超えています。

Dear Future Generations: Sorry
https://www.youtube.com/watch?v=eRLJscAlk1M

タイトルは「未来世代の皆さん:ごめんなさい」とでも訳せばよいでしょうか。
この動画は環境を破壊し、地球を人類が住みづらくしてしまった現代人の若者
が、一面に広がる砂漠を背景に未来世代に謝罪する、というシーンから始まり
ます。

「この『アマゾン砂漠』は昔『アマゾン熱帯雨林』と呼ばれていたんだ」
「木ってやつはすごい。空気を浄化し、炭素を蓄え、水をきれいにし、薬や食
 料を提供してくれた」
「でも本当にごめんなさい。僕らが木をみんな燃やしたり、伐採してしまった
 んだ」
「小さい頃、ネイティブアメリカンは7世代先のことまで考えて行動したって
 聞いたよ。でも悲しいことに現代の僕らのほとんどは明日のことすら考えて
 いない」
「でも一番申し訳なく思うのは、環境破壊のことを発展と呼ぶ僕らの考え方な
 んだ」

などなど。もの悲しいBGMに乗せ、ラッパーであり活動家でもあるPrince EA氏
の口からリズミカルに繰り出されるフレーズは胸にグサッと刺さります。

しかしビデオは未来を悲観して終わるのではなく、最後には、そんな未来にし
ないためにStand for Treesでカーボンオフセットをして、森林保全に貢献し
よう、という呼びかけがあります。情緒と理性をうまく組み合わせたなかなか
のビデオでした。

この動画を仕掛けた団体、Stand for Treeのホームページはこちらです。
https://standfortrees.org

誰しも未来世代から非難されるより感謝されたいですよね。緑の地球を茶色い
砂漠にしないために自分には何ができるか、改めて考えるいいきっかけになり
ました。(柳田)

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