vol.13 「IIRC、統合報告の活用状況に関する調査結果を発表」など(2017年12月4日)
こんにちは。イースクエア代表の本木啓生です。
11月中旬に、弊社が主宰する「フロンティアネットワーク」のメンバー企業と
共に欧州の数か国を巡ってきました。
折しもドイツ・ボンはCOP23の開催中。現地で参加したビジネス会合を通して、
気候変動をめぐり各国政府のみならず産業界が真剣に議論を重ねる状況を肌で
感じることができました。また、ブリュッセルでは欧州委員会を訪問し、サス
テナブル・ファイナンスや非財務情報開示指令の担当部局の方から、世界に先
駆けたEU政策の現状と今後の方向性を聞くことができました。地球あるいは人
類社会のサステナビリティに対する危機感を前提に、サステナビリティをビジ
ネスの差別化要素としてどう活用していくのかということを真剣に考え、実践
に移している状況をひしひしと感じました。
例えば、訪問した国際物流・郵便の大手、ドイツポストDHLはCO2を大量に排出
する業界に属しながらも、2050年までに配送関連のCO2排出量をゼロにする目標
を公表し、配送車のEV化を進めています。本社ビルの壁面には「Mission 2050:
ZeroEmissions」と書かれた巨大なポスターが掲げられていました。
英国では、世界を代表する大手NGOのひとつオックスファムを訪問したのですが、
環境保全や貧困解消など、自らのミッションを実現するために、企業に対して
コラボレーション型からチャレンジ(対決)型まで、場面に応じてアプローチ
を変えているということで、目的を実現するための戦略思考には舌を巻きました。
海外遠征と称する当視察ツアーに毎年ご同行頂いている末吉竹二郎さんからは、
今年は「脱炭素化へ向けて確かな歩みを始めた欧州ビジネスの旅」と総括して
いただきました。強い意志の下、真剣勝負でサステナビリティに取り組む企業
や各団体の方々から大いに触発される一方、日本の状況に一層の危機感を持っ
た旅でした。
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◇◆ 目次
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〔1〕注目CSRニュース -
「IIRC、統合報告の活用状況に関する調査結果を発表」
〔2〕サービス紹介(1/2) - ESG評価改善アドバイス
〔3〕サービス紹介(2/2) - CSV経営支援 -
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〔1〕注目CSRニュース -
「IIRC、統合報告の活用状況に関する調査結果を発表」
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このコーナーでは、企業のCSR担当者向け情報サイト、「CSRコンパス」
http://www.csr-compass.jp
のトレンドウォッチから注目ニュースをピックアップしてご紹介します。
今回取り上げるニュースは、「IIRC、統合報告の活用状況に関する調査結果を
発表」です。
------<CSRコンパス10月のニュースから転載>--------------------------
国際統合報告評議会(IIRC)は、今年3月から2か月にわたり世界的に実施した、
初めての国際統合報告フレームワーク(フレームワーク)の活用状況に関する
コンサルテーションの結果をまとめた報告書を発表した。
現在、既に世界62カ国の1,500以上の企業が、持続可能な開発と財務的な安定性
という目標を報告に取り入れている。今回のコンサルテーションには19か国に
おけるフォーカスグループとの会合を含め400あまりの企業からのフィードバッ
クが集まった。その結果、フレームワークの実施は確実に広まり統合報告
の概念が受け入れられており、現在は実施内容を向上させることにフォーカス
されている。
その後、IIRCでは、IIRCのマルチ・キャピタルのモデルをどのように適用すべ
きかといったガイダンスや、企業の活用事例など、企業報告の作成者や他のス
テークホルダーが取り組む課題の解決を支援するガイドラインを発行すること
を発表している。
さらに、IIRCは今回寄せられた意見から2013年にリリースしたフレームワーク
の改定についても検討したが、ただちに改定が必要な問題はないと判断し、改
定のプロセスを開始するのは2019年以降になると結論した。
一方、IIRCは英国アバディーン、オランダPGGM、オーストラリアCbusなど12の
大手機関投資家とともに共同声明を発表し、統合報告による情報開示を企業に
求め、企業が長期的な展望を示すことは投資家のポートフォリオ作成に重要で
あると訴えた。
意思決定と資本配分について、短期的な展望から、中長期的な将来の業績を決
定する戦略的課題やリスクと機会にフォーカスをシフトすることで、より持続
可能な発展と安定した事業につながり、透明性がより高く、より強靭な資本市
場の成長をうながすと主張する。
------<転載ここまで>------------------------------------------------
いまや1,500以上の組織が統合報告の概念を取り入れた報告書を発行しており、
報告書のあるべき姿としての存在感が高まっています。一方、統合思考という
概念に正確に、そしてより結果を有効なものとするために、取り組むべき課題
が明らかになってきました。
例えば、「マルティプル・キャピタル※1」においては、それぞれの事業の中で、
人的、社会・関係資本などのマトリックス指標でレポートを行っていくことや、
有効な先進事例を示していく必要性が検討されています。
また、統合報告や統合思考において、「情報のコネクティビティ※2」は非常に
重要な要素ですが、まだ十分に理解されていないようです。さらに、シニアマ
ネージャー層に統合思考を広め組織全体に浸透させていくことも課題として挙
がっています。
統合報告では、聞き慣れない用語が用いられており、それも理解が進みづらい
要因の一つかもしれません。しかし報告書の発行事例が増えていくにつれ、ど
ういったことを報告すべきなのか共通認識が生まれ、それも解消していくので
はないでしょうか。
IIRCは、 国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN:International
Corporate Governance Network)と共催で、来年2月28日と3月1日の2日間、
「ICGN-IIRC東京コンファレンス2018~長期価値創造に向けて~」を開催する
そうですので、ご興味のある方は参加されてはいかがでしょうか。
イベントの詳細は、日本公認会計士協会のWebサイトをご参照ください。
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/about/news/20171115ubs.html
※1
マルティプル・キャピタルとは、財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、
社会・関係資本、自然資本の6つの資本のことを指す。
※2
情報のコネクティビティとは、組織の長期にわたる価値創造能力に影響を与え
る要因の組合せ、相互関連性、及び相互関係の全体を意味する。
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〔2〕サービス紹介(1/2) - ESG評価改善アドバイス
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世界の多くの機関投資家やファンドマネジャーから高い評価を得ているESG評価
機関による企業の評価結果を活用。貴社が改善すべき項目を特定し、同業他社
で評価の高い企業の情報開示事例とともに具体的な改善提案を行います。
具体的なアドバイスをもとに、FTSE4Good(FTSE Blossom Japan Index)、MSCI
(ジャパンESGセレクト・リーダーズ)、Sustainalytics、oekomを始めとする
各種ESG評価にも備えていただきます。
例えば以下のようなお声にお応えします。
・様々なESG評価機関から連絡があるが、その重要性や優先して対応すべきもの
の判断がつかない。
・個々のESG評価に対応してきたが、統合して対策を検討することで、効率的な
対応を行っていきたい。
・自社のESG評価を改善したい。インデックス入りしたい。
・CSR報告書/統合レポートを作成する際に、ESG評価を高める内容としていき
たい。
・ESG評価対応を通して自社のCSR取り組みを体系的に見直し、今後の行動計画
を検討していきたい。
詳しくはお気軽にお問い合わせください。
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〔3〕サービス紹介(2/2) - CSV経営支援 -
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2011年にそのコンセプトが公表されて以降、さまざまな企業でCSV(共通価値
の創造)のフレームワークの活用が進んでいます。企業によって活用のレベル
は様々ですが、社会課題と自社事業との接点を洗い出し、明文化していくプロ
セスは、CSV経営を進めていくにあたって重要な第一歩となります。
「価値の創造」とは、組織と社会に良い変化を生み出していくことであり、持
続的な成長を続ける企業は、つねに自らも変化を続けています。社会により良
い変化をもたらしていく組織となるために、長期を見据えて、どのような強み
を備えていく必要があるのか。社会課題を起点に、自社の価値創造戦略の中核
となる要素を検討し、共有し、組織に変化を起こしていくところにこそ、CSV
のフレームワーク活用の本質があります。
イースクエアでは、CSVのコンセプト、その検討に関する様々なツールやフレ
ームワークを活用し、CSV経営に取り組む企業をご支援しています。CSVを世界
的に推進する団体、FSGが主催するグローバル・コミュニティ「Shared Value
Initiative(SVI)」の認定アフィリエイト・メンバーでもあり、こうしたグ
ローバル・ネットワークを背景に様々なご支援が可能です。
例えば以下のような支援を行っています。
・CSV経営に関する基礎から最新事例まで、様々な情報インプット
・中長期の経営戦略策定の土台となるグローバルな社会課題調査
・CSV視点での経営層との意見交換セッションやヒアリングの実施
・CSV重点領域特定に向けた社内キーパーソンによるワークショップの実施
・CSV戦略の策定
詳しくはお気軽にお問い合わせください。
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【編集後記】
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いまアフリカのタンザニアに来ています。今回、携わっているプロジェクトで
使用するビニール製のパッケージを機内手荷物として持ち込んだのですが、空
港の税関で税金を徴収されました。徴税自体は想定範囲内だったのですが、そ
の税率の高さには少々驚きました。輸入関税、付加価値税(VAT)、物品税を合
わせると物品自体の価格の120%超にもなったためです。税関職員に理由を尋ね
てみると「ビニール袋は環境に悪影響があり、使用を減らすために関税を高く
設定している」との回答でした。
タンザニアの隣国ケニアでは、ビニール袋の使用、製造、販売、輸入を禁止す
る法律が今年8月28日に施行されたばかりです。違反した場合、最大4年間の禁
錮刑か最高4万ドルの罰金が科されるという世界一厳しいビニール袋規制です。
産業界を中心に規制への反対意見もあったようですが、政府が押し切った形で
す。法律施行直後にケニアを訪問したのですが、スーパーのレジ袋は廃止され、
リユース可能なエコバッグを消費者が購入する仕組みに切り替わっており、以
前は街角に散らかっていたビニール袋がかなり減っていた印象でした。アフリ
カではケニアに先駆けて、ルワンダとモロッコが既にビニール袋の禁止措置を
講じています。
いまビニール袋を中心としたプラスチックごみの海洋流出が世界的に問題にな
っています。環境規制というと先進国が常に先行しているイメージがあります
が、途上国の動向にも目を配っておく必要性を感じたのでした。(柳田)
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