WWFやWMO、森林火災、気温上昇ともに記録的な年になると予測。森林破壊を招く投資への警鐘も
2020年9月 5日
世界自然保護基金(WWF)とボストンコンサルティンググループ(BCG)は、今年4月の時点において世界的に火災警報の数が昨年比で13%増加しているとし、既に記録的な森林火災の年になっているとした報告書「火災、森林、未来:暴走する危機(Fires, Forests, and the Future: A crisis raging out of control)」を発行し、火災の傾向とそれが人々と地球にとって何を意味するのかを掘り下げ、主要な原因に対処するためのいくつかの提言を示している。森林火災の主な原因は、気候変動がもたらしているこれまで以上の高温と乾燥、そして主に農業用地に転用するための森林伐採だと指摘している。
森林破壊はアマゾンで急増しており、今年の火災は過去10年の平均より52%増加、過去3年では24%増加している。違法な森林破壊が目立ちWWFは緊急対応を呼びかける。全ての野火(wildfire)のうち75%は人的要因によるもので、この状態が続けば、生物多様性や生態系の破壊により人々の生活や経済に打撃を与え、長期的な健康被害をもたらすだけではなく、大量の炭素の放出による長期的に深刻な結果を招くという。
森林火災に深刻な影響を及ぼす温暖化の新たな予測に関しては、世界気象機関(WMO)の新たな報告書「科学の下で団結せよ2020年版(仮訳)(United in Science 2020)」によれば、気温上昇を1.5℃または2℃を十分に下回るように抑えるというパリ協定の目指す目標値からは乖離し、温室効果ガスの大気中濃度は上昇を続けており、5年間の平均気温は最高記録を更新する見込みだという。パンデミックによる温室効果ガスの排出量の一時的減少はあったものの、既にパンデミック前の水準に戻りつつある。この報告書は、WMOがまとめた、IPCCや、UNEPといった多様な機関の調査報告を踏まえた合同報告書の第二弾であり、気候変動により増加している様々な不可逆的なインパクトにハイライトをあてている。
2016年から2020年までの5年間の世界平均気温は、産業革命前と比較して1.1℃上昇と、記録的に高くなる見込みで、2015年までの5年間と比較しても0.24℃上昇するとみられる。また2020年からの5年間のうち最低1年は24%の確率で1.5℃を上回るという。
一方で、環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、バンクトラックなど他5団体とともに、森林破壊に関連する投融資金額を示したデータベース「森林と金融」を東南アジア限定からグローバルに拡大したと発表した。世界の三大熱帯林地域で森林伐採や土地劣化につながるような産品(紙パルプ、牛肉、パーム油、大豆、天然ゴム、木材)の生産や取引に関し、世界の銀行が、2016年以降、森林破壊と土地劣化を加速させているとされるパーム油や紙パルプ部門における製品の生産や取引に約1,540億米ドルの融資と引受を行ったと、警鐘をならしている。みずほは資金提供額(総計)で世界5位、三菱UFJはパーム油部門で上位にランクインしている。