WRI、水リスクマップのAqueductを更新 世界の水リスクに警鐘
2019年8月 6日
世界資源研究所(WRI)は、水リスクに関するグローバルな基準となっている評価ツールの1つであるAqueduct(アキダクト)について、世界の水リスクを示した世界の地図情報「アキダクト水リスク・アトラス(Aqueduct Water Risk Atlas)」の更新を行った。13の水リスク評価項目を設定しており、そのうち新たな機能として地下水の状況や月ごとのデータが追加されている。水の枯渇により、水道の蛇口から水が出ない状況を指す「デイ・ゼロ(Day Zero)」が、南アのケープタウン、ブラジルのサンパウロ、タイのチェンナイなど世界各地で近年発生しており、水の危機は世界的に深刻さを増していることが浮き彫りとなっている。
世界189カ国のそれぞれの州や地域における水、干ばつ、洪水のリスクをランキングした結果、世界人口の4分の1が居住する17カ国が「非常に高い」水ストレスに晒されていることが明らかになった。これらの国々では、農業、産業、そして市民生活を営む上で利用可能な表層水および地下水のうち、年間平均80%を使い果たしている状況であり、気候変動の影響によって発生する軽度の水不足であっても、悲惨な結果を招く可能性があるという。また、これら17カ国のうち、12カ国を中東や北アフリカ地域の国々が占めており、専門家らは水リスクが紛争や移住の原因になりうることも指摘している。13位となったインドでは、特に北インド地域で地下水の枯渇が著しいという。WRIによると、2030年には45の都市で300万人以上の人々が非常に高い水ストレスにさらされるという予測もあり、グローバル・サウス諸国(世界で経済発展が進んでいない国々)の都市部においては、家庭レベルでの水不足が想定よりも深刻になっている。WRIは、公営の水道システムの全世帯・区画への拡張など、具体的な方策についても提案を行っている。
本ツールの利用者数は5万人以上(2018年)。300社以上の企業が、CDPに水リスク関連の情報開示を行う際に本ツールを利用しているという。