2021年6月15日

世界保健機関(WHO)は、電子廃棄物が子どもや妊娠中の女性に与える影響に関する初の報告書「子どもとデジタル廃棄物処理場(仮訳)(Children and Digital Dumpsites)」を発表した。世界で約1,800万人の子どもや若者、約1,290万人の女性が、非正規の廃棄物処理場で働くなど、有害物質にさらされていると警告している。毎年大量の電子廃棄物(E-waste)が違法に低中所得国に廃棄されており、WHOは、輸出国にも拘束力のあるアクションを求めている。

報告書によれば、非正規の廃棄物処理場において、労働者は電子廃棄物から金や銅などを回収する過程で、鉛、水銀、ニッケルを始め1,000以上の有害物質にさらされるという。妊娠中の女性への影響としては、死産や早産、低出生体重児などの危険性が高まり、鉛に晒されることで新生児の行動の神経学的評価が著しく低下するなど、その悪影響は一生涯に及ぶ可能性がある。子どもの健康に対しては、肺機能の低下、DNAの損傷、甲状腺機能障害、後年でガン疾病の罹患リスクの増加などが挙げられている。低年齢では5歳の子が電子廃棄物処理に従事していることもある。子どもの手は大人に比べて小さく器用であるため、親が子どもを働かせることがあるという。その他にも、有害物質を排出するリサイクルセンターの近隣で居住、通学し、遊ぶ子どもたちがいる。体が小さく未発達である子どもへの影響は大きく、鉛や水銀など強い毒性のある物質は知的能力にも悪影響を及ぼしかねない。

グローバル電子廃棄物統計パートナーシップ(GESP: Global E-waste Statistics Partnership)によると、2019年の世界の電子廃棄物は5年間で21%増加している。このうち正規の施設で処理されたのはわずか17.4%であった。

毎年大量の電子廃棄物が、法規制が不十分な低中所得国へ輸出されている。そして、電子廃棄物が適切な処理設備や、環境や健康への規制が未整備な状態で処理されている。報告書では、輸出国、輸入国双方の政府による効果的かつ拘束力のあるアクションを呼びかけている。特に子どもや女性の電子廃棄物処理従事者の健康を守るため、環境に配慮した処理、より耐久性のある電子および電気製品の製造に加えて、地域医療の充実の必要性を訴えている。

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