2022年7月26日

世界経済フォーラム(WEF: World Economic Forum)は、気候危機に直面している世界状況の下、GDPの成長を目指せば目指すほど自己破壊的なコストが増すという「不経済な成長(uneconomic growth)」の継続に疑問を投げかけ、生態系の機能を損なわず経済の最適規模を維持する「定常経済(steady-state economy)」が理想であるとする、経済学者ハーマン・デイリーの理論を紹介した。

近年の熱波や森林火災の増加を見ても、経済が基本的な生態学的限界を超えて成長しているのは明らかである。デイリーによれば、GDPの継続は、こういった気候変動の危機や、致命的な汚染といった自己破壊的なコストを増大させることになるという。排出削減の相次ぐ失敗もあり、GDPを最優先することへの疑問の声が高まっている。デイリーの提唱する「定常経済」は、絶え間なく成長し続ける経済に替えて、新たな経済モデルになりえる。定常経済の実現については、国の状態によって対応が異なり、GDPをベースとした経済成長が人の生死にかかわる発展途上国においては、定常経済の概念を適用することが難しい可能性も否めない。

一方、デイリーとの共同でGDPに替わる指標「真の進歩指標(GPI: Genuine Progress Indicator)」の開発も進んでいる。GDPから環境への悪影響を差し引いた新しい指標は、既にカナダやハワイで展開されている。