2021年1月21日

世界経済フォーラム(WEF)は、ボストン・コンサルティングと共同で、「ネット・ゼロ・チャレンジ」報告のシリーズ第二弾となる「ネット・ゼロ・チャレンジ:サプライチェーンがもたらす好機(仮訳)(Net-Zero Challenge: The supply chain opportunity)」と題した報告書を公表。企業の温室効果ガス(GHG)排出ネット・ゼロに向けた取り組みには、サプライチェーンの脱炭素化(スコープ3)(注)が鍵であり、全ての企業の気候変動対策にインパクトを与える"ゲームチェンジャー"に成り得ると国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の気候行動ハイレベルチャンピオンのナイジェル・トッピング氏もコメントしている。

本報告の主要点は以下のとおり。
1. サプライチェーンを脱炭素化することにより、多くの企業は自社の気候変動対策の効果を倍増させることができる。

2. 世界のGHG排出量のうちの50%以上は8つのサプライチェーン(食品、建設、ファッション、日用消費財、電子機器、自動車、専門的サービスおよび輸送)から発生している。また、そのうちのかなりの割合は一部企業の傘下にある。

3. サプライチェーンがネット・ゼロ化しても、消費者にはコスト面での負荷はほとんどない(中期的にせいぜい1から4%の上昇)。サプライチェーンで発生している全排出量のうち40%は、循環型、効率性、再生可能エネルギー等の既存の手頃な手段を用いて減らすことができ、製造コストへの影響は非常に少ない。

4. しかしながら、サプライチェーンの脱炭素化は難しい。大手企業でも、必要なデータを入手してサプライヤーが守るべき明確な目標や基準を設けるのに苦戦している。特にサプライチェーンのどの部分で排出量が発生しているのかがわかりづらい場合や、業界全体レベルでの行動が必要な場合はなおさらである。

5. 本報告書では、サプライチェーンの脱炭素化に取り組む先駆的な企業数十社へのヒアリングを経て、全ての企業に適用できる以下の9つの取り組みを紹介し、今が動くべき時だと締めくくっている。
1) 包括的な排出量のベースラインを構築する。
2) 野心的かつ全体的な削減目標値を設定する
3) 製品設計の見直し
4) 地理的な視点から、調達戦略を再検討する
5) 野心的な調達基準を設定する
6) サプライヤーと削減に向けて直接的に協力体制を敷く
7) 同業者との協調。業界としての目標を設定する
8) グリーンソリューションのコストを下げるため、消費者の需要を喚起する
9) 企業内ガバナンスのメカニズム構築および経営レベルの報酬と排出量目標を連動させる

(注)本報告書におけるスコープ3は、バリューチェーンの上流および下流の排出量を範囲としている。例えばある製品を作る際、その原材料を製造するときの排出量ならびに完成した製品の輸送、使用、処分時にでる排出量。