2023年2月14日

持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)は、近年急増している企業に対するESGに関連した訴訟について分析した報告書「トレンドの解明、ESG関連訴訟が増加する背景は何か(仮訳)(Uncovering Trends: What is Behind the Increase in ESG-Related Litigations?)」と題する報告書を発表した。

最近30年間に、ESG課題に関する企業に対する訴訟は25%増加しているという。WBCSDの分析によれば、次の3つの主要なトレンドがみられ、増加の原動力に関連しているという。

1. 子会社やサプライヤーなど、サプライチェーンに関わる訴訟が増加
2. 報告や「標準的な注意(standard of care)」の維持に関する予防的デュー・デリジェンスを要件として引用する訴訟が増加
3. 多くのデュー・デリジェンス関連の訴訟が生物多様性条約やOECDガイドラインなどのソフトローを根拠としている

ESG関連訴訟の増加は、環境・社会が企業に与える影響と、企業が環境・社会に与える影響の両方に着目する「ダブルマテリアリティ」を法律家が新たな法的枠組と解釈のなかで考慮するようになってきていることも要因となっているという。ダブルマテリアリティの観点においては、企業は川上から川下までのバリューチェーン全体を考慮し、総合的な観点からESG重要課題への影響を評価・開示する必要がある。

最近フランスで「注意義務」に関する法律が導入されたことは、その重要性を示す好例である。報告書では、重大な法的リスクは企業が直接的に管理する事業をはるかに超えて発生し得ることが示されており、法務担当者や取締役会は焦点を広げて、たとえば顧客、投資家、地域社会など、企業の業務に影響を及ぼす可能性のある幅広いステークホルダーに配慮することにより、企業を保護すべきであるとする。