2023年10月 3日

企業のSDGs達成支援を行う国際NGOのワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)は、2023年版の「食と農業ベンチマーク(仮訳)(2023 Food and Agriculture Benchmark)」および「自然ベンチマーク(仮訳)(2023 Nature Benchmark)」を発表した。

本ベンチマークでは、世界で最も影響力のある食品・農業企業350社を対象に評価を行い、ランク付けを行っている。前者は栄養、労働環境、気候への影響管理について評価しており、後者は自然と生物多様性の保護に関する取り組みを評価している。

「食と農業ベンチマーク」では1位がユニリーバ、2位ネスレ、3位ダノンと続いた。日本企業で50位以内に入ったのは、味の素(16位)、明治(37位)、キリン(38位)、不二製油(48位)の4社であった。一方、「自然ベンチマーク」のトップ3は順にネスレ、ユニリーバ、ダノンで、日本企業で50位以内に入ったのは、味の素(12位)、明治(21位)、キリン(27位)、アサヒ(39位)、サントリー(47位)、不二製油(49位)の6社であった。

調査結果の概要は、以下の通り。

「食と農業ベンチマーク」
・農家の生活格差の解消に対する企業の取り組みは不十分である。27%の企業が調達や価格設定を通じて農家の収入の安定化を支援しているが、収入格差等を評価・計算している企業は4%未満である。
・人々の健康向上促進に対する食品会社の取り組みは不十分である。製品の栄養向上の取り組みに関する進捗情報を消費者に公開している企業は18%にとどまっている。
・気候目標を設定している企業は増加したが、その進捗は依然として低い(165社がコミットメントを未開示)。
・リジェネラティブ農業のアプローチは、対象企業の51%が参考にしており、27%は調達や価格戦略を通じて農家や漁師の生活を改善する戦略を実施している。ただし、肥料(10%未満)や農薬(4%程度)の情報を開示している企業は少ない。
・企業の説明責任の欠如が、変化を妨げている。

「自然ベンチマーク」
・自然への影響や依存を評価し、開示できていない。自社の自然への依存度を把握し総合的に取り組んでいる企業は1社もない(0%)のが現状である。
・森林破壊について、期限付きの目標を設定している企業はわずか6%である。
・環境権が人権として認識されていない。地域コミュニティの環境権の尊重に取り組んでいる企業は2%未満、水と衛生へのアクセスを保障しているのは12%である。
・ウォータースチュワードシップを加速させる必要がある。約30%の企業は水使用量の削減や水ストレス地域からの水使用量を開示しているが、排出水に含まれる汚染物質に関する指標を開示している企業は12%であり、その削減目標を設定している企業は2%のみである。
・取締役会は説明責任を果たす必要がある。専門知識のある取締役も必要である。