2021年4月13日

(一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)からの転載)

国連支援の責任投資原則(PRI)は、2021年から24年までの3か年の戦略計画を公表した。現在、PRIの署名機関はグローバルベースで4,000機関に近いが、3年後には6,000機関に引き上げる一方で、署名機関の水準低下を防ぐため署名機関の最小基準を詳細化し、基準を満たせない場合の除名規定を強化する。また署名機関がPRIに提出するレポートについて第三者認証を導入するとしている。

PRIは国連機関ではなく、英国の非営利団体。国連環境計画(UNEP)とグローバルコンパクトが支援する形だ。ESG投資への関心が増大してきたことで、年金基金や資産運用機関の加入が相次ぎ、「もっとも成功した非営利事業体」と評価される。署名機関からの会費収入と寄付等による24年の収入額は3,060万ポンド(約45億9,000万円)と見込んでいる。

新規3か年計画は、17年に定めた「責任投資の10カ年ブループリント・フレームワーク」に基づく2回目の3か年計画となる。同10カ年計画に盛り込んだ「責任投資機関」「持続可能な市場」「すべてのために繁栄する世界」の3分野で合計22のイニシアティブの進捗状況を踏まえて目標を修正した。

今回の改定の最大のポイントは、署名機関6,000件達成を目指して、イニシアティブに盛り込んでいる署名機関の「適格性」をチェックする最小必要事項を大幅に詳細化した点だ。現行では 1)責任投資を実施する組織内外のスタッフ 2)責任投資を組織のシニアレベルで監督 3)責任投資を推進する全体的アプローチ、あるいはES要因に関する公式なガイドラインを設ける基本政策の設定、の3点となっている。

新基準では、これらに加えて、4)資産運用対象の90%を責任投資政策の対象とする 5)基本政策を外部公表する 6)少なくとも100億ドル以上の投資資産の場合はそのすべて、あるいは資産総額の10%以上に、ESG評価を盛り込む 7)上場企業へのエンゲージメントと株主投票の要求(8)情報開示報告書の信頼性確保、の4点を加える。このうち4)と5)は、優先事項としている。

また8)の情報開示の信頼性については、(1)レポートの内部検証(2)開示データの内部監査(3)開示データの独立した第三者機関による監査等を求めている。

PRIは2022年3月に、各署名機関がPRIに提出する報告書の内容が、改定した最小基準に合致するかどうかを点検する。合致していない署名機関に対しては同年末までに改善のエンゲージメントを行う。さらに、改善効果が署名機関の責任投資行動に反映されたかどうかを23年半ばまでに再度、点検し、改善が見られない場合は、除名するとしている。

https://www.unpri.org/pri/pri-2021-24-strategy
https://www.unpri.org/download?ac=13269
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