豪コモンウェルス銀行、気候変動関連リスクを開示しなかったとして株主から起訴される
2017年8月 8日
8月8日、豪銀行大手コモンウェルス銀行は、気候変動が事業に与えるリスクをアニュアルレポートで適切に開示しなかったとして、株主から起訴された。同銀行の、20年以上の長期個人株主であるGuy AbrahamsとKim Abrahamsの訴えを代弁し、法律事務所Environmental Justice Australiaがオーストラリア連邦裁判所に訴状を提出した。
銀行が気候変動リスクに関する情報を公開すべきとして、株主が訴訟を起こすのは世界で初めて。オーストラリアの企業法において、その資産内容や業績等についての偽りのない、公正な情報提供が求められているが、今回の訴えの主な主張は、気候変動がコモンウェルス銀行の事業に与えるリスクを適切に開示しなかったというもの。そして、今後のアニュアルレポートでは、情報を開示していくよう求めている。
グリーンピースは、豪Market Forces(豪の環境保護ネットワーク「地球の友」の連携団体でリサーチ等を行っている)の分析として、オーストラリアの4大銀行の一つであるコモンウェルス銀行がパリ条約へのコミットメントを表明した1年半後に、60億豪ドルを化石燃料企業に融資している点を指摘している。
2017年5月に発表された国連環境計画のレポート「世界における気候変動関連の訴訟の現状(仮訳)(The Status of Climate Change Litigation - A Global Review)」によると、気候変動関連の訴訟件数が増加しており、多くの場合、市民やNGOが訴えている。また、同レポートは次の傾向を指摘している。
・米国での気候変動関連訴訟は654件に達しており、米国を除く地域での訴訟件数合計の3倍に達している。
・2014年に比べて、気候変動関連の訴訟をかかえる国の数が3倍となった。177の国々で、クリーンで健康的な環境(clean and healthy environment)を人の権利として認めているが、気候変動の時代において、司法機関はこの権利の定義づけを求められるようになりつつある。
・「気候変動難民」が主要課題になりつつある。いくつかの分析では、気候変動の影響で2050年までに10億人が移住を余儀なくされ、今世紀中の気温上昇を2℃未満に抑えられない場合には、今世紀後半に更に増加すると予測されている。