2023年8月 3日

米環境NGOのセリーズ(Ceres)と、水管理の企業支援を行うコンサルティング会社のブルーリスク(Bluerisk)は、企業がバリューチェーン全体における水スチュワードシップの価値評価のための新たな費用便益分析フレームワークを紹介する報告書を公表した。同フレームワークは、事業に対する水関連リスクを考慮することからさらに一歩進んで、対策費用や水管理戦略の潜在的なビジネスおよび社会的利益を算出することにより、水の価値を高めることに焦点をあてている。

環境に関する情報開示を推進するCDPが2022年に行った水セキュリティ調査では、調査対象となった3,909社のうち半数以上が水関連の機会についての開示を行っていないことが明らかになった。水スチュワードシップが事業にとって重要な財務的または戦略的な影響を与えるものではないと判断している企業が多く、その重要性を認識していない可能性が高いと指摘している。この結果を受けて、Bluerisk社の創設者であるPaul Reig氏は「本フレームワークは、事業への水の財務的影響について、価値ではなくリスクに焦点をあてている企業に対し、水の価値指標(仮訳)(water value metrics)を使用して、水関連の機会をより適切に特定し、水スチュワードシップへの投資の正当性を示すもの」と述べた。

同報告書では、水資源に大きく依存しているアパレル業界でのテストケースを提示し、水スチュワードシップへの投資がバリューチェーン全体でプラスの社会的利益を生むことが示されている。今回発表されたフレームワークは、企業のバリューチェーンのどの段階でも業界を問わず適用可能であるという。企業は結果に基づいて、事業地域、サプライヤーおよび流域規模でのソリューションに優先順位をつけ、社会的および法的ライセンスの強化へとつなげることができる。また投資家は、本フレームワークを使用して、ウォーターフットプリントの大きい企業に対し、財務リスクとして水の管理に取り組み、水への影響に対処するように働きかけることができようになるとしている。