2021年6月16日

世界銀行は、投資家が企業に温室効果ガス削減を求める取り組みClimate Action 100+の教訓をもとに、新たに生物多様性損失に対する「Nature Action 100」イニシアチブの構想を示した提案書と、報告書「自然のために民間資金を結集する(仮訳)(Mobilizing Private Finance for Nature)」を発表した。
提案書は、コロンビア大学の国際公共政策大学院の院生11名と世界銀行が共同で、事例研究からの教訓をもとに今年作成した。

Climate Action 100+は、パリ協定に続き、投資家の気候リスクや機会が関心を集めた時期に発足し、企業にパリ協定と整合した移行戦略の策定や情報開示、排出削減を促していくことに成功した。一方で、ネットゼロ企業を評価するベンチマークは2021年になってようやく設定されたことで、目標設定が十分に野心的ではなかったこと、多様な環境リスクへのエクスポージャーは開示されたものの、バリューチェーンにおける気候や森林などの物理的リスクや、水関連の移行リスクについては報告が不十分だったことなどが課題として導かれている。さらに、5つのパートナー機関による運営によって、ガバナンスの効率性が低下したことや、地域別にも、北米や欧州に比べて、排出量の多い企業を含むアジア企業へのエンゲージメントが少なかったことなども課題として挙げられた。

上記の教訓から、「Nature Action 100」については次を含む提案が示されている。

・目標は、中期的に生物多様性損失のネットゼロ、長期的に生物多様性へのポジティブな影響、とし、生物多様性損失の単一で共通の評価メトリクスを使用
・単一の組織によるアカウンタビリティを明確にした、中央集約的な管理
・発足時の勢いを最大にするために、2021年10月に昆明で開催される生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)で発足

本構想の開発には、Finance for Biodiversity Pledge、World Benchmarking Allianceなどの投資家グループも協力している。