2020年8月 4日

国際標準化機構(ISO)は、生物多様性の規格「ISO/TC331」策定に向け専門委員会を設置した。フランスのISO規格の標準化団体である アフノール(AFNOR)が委員長を務め、生物多様性課題に取り組む国内外の専門家との協力のもと統合的なアプローチの提供を目指す。

土地や生物種の過剰な搾取、集約農業、汚染、気候変動による生物多様性の減少の結果、我々は自然災害、食糧・水の不足、動物由来感染症(または人畜共通感染症、ズーノシス)などに直面することとなっており、ISOは生物多様性の強化は持続可能な発展の基盤であるとしている。

同委員会マネージャーのLhuillery氏は、本スタンダードは、官民を含む組織が生物多様性課題を組織の戦略・決定・行動に埋め込むことを支援するものであるとコメントした。持続可能な開発のための機会創出と生物多様性の保全強化を両立し、健全な関係を築くことを目指しており、それにはグローバルなアプローチが必要だとしている。

同スタンダードでは、グローバルで使用できる条件や定義の標準化、影響分析のメソドロジー、戦略やアクションプランを定義するフレームワーク、モニタリングや報告ツールを含める予定。またエコロジカル・エンジニアリング、自然をベースにした解決策や関連技術に関する生物多様性課題のガイドラインが作成される見込み。
同スタンダードの活用により、組織が特に持続可能な開発目標(SDGs)の目標13、14、15に直接的に、またそれ以外のSDGsにも間接的に貢献することができるという。

生物多様性や自然を中心に据えた取り組みの意義は世界で見直されている。今年7月に、世界経済フォーラム(WEF)は、企業が自然を優先させた取り組みを行うことで2030年までに新たに4億人近い雇用を生み出すとした報告書「自然とビジネスの未来レポート(仮訳)(The Future of Nature and Business Report)」を発表した。WEFのNew Nature Economyシリーズ3部作の2作目である。自然を第一に据えることで企業や経済のレジリエンスが高まり、自然にプラスの影響を及ぼす解決策(nature positive solution)は10.1兆ドルの事業機会を生むとしている。