2018年11月14日

米国の非営利研究機関である投資家責任リサーチセンター(仮訳)(IRRCi:Investor Responsibility Research Center Institute)は、「サステナビリティ・レポートと統合報告の現状2018(仮訳)(State of Sustainability and Integrated Reporting 2018)」と題する報告書を発表した。サステナブル投資研究所(仮訳)(Si2:Sustainable Investments Institute)に作成を委託したもので、S&P 500株価指数を構成する大企業銘柄500社について、サステナビリティ・レポートや統合報告の発行状況を分析する内容。サステナビリティ・レポート等で非財務情報を開示する企業はかなり増えているが、完全な統合報告を作成している企業は少数にとどまることを指摘している。

同報告書によれば、S&P 500企業のうち78%がサステナビリティ・レポートを発行しており、サステナビリティ情報開示の普及が急速に進み、主流化していることが示された。これらの企業のうち、95%は環境パフォーマンスを年々比較可能な形で数値化しており、2/3は期限を設定して数値化した環境目標を掲げている。86%は社会パフォーマンスを数値で示しているが、社会目標を数値で定めている企業は40%だった。

一方、アニュアルレポート等の財務情報開示義務に基づく開示情報の中でサステナビリティを取り扱っている企業は40%であった。Si2の定義する完全な統合報告の形で情報開示を行っている企業は、500社中わずか14社だった。統合報告は、財務情報以外にも企業のリスクや価値創造に影響を与える情報を含め、企業の全体像を投資家に示すものであり、国連責任投資原則(PRI)が採用を推奨している。

GRIや国際統合報告評議会(IIRC)、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)など既存の枠組みに沿った情報開示を行っている企業はわずかで、97%は独自方式を使用している。また、サステナビリティ・レポートのうち、外部保証を取り入れているものは36%で、そのうち90%は温室効果ガス排出量に関する保証に限られているという。