2024年1月15日

途上国の貧困問題に取り組む英国のNGOオックスファムが、不平等と世界的な企業の権力に関する新たな報告書「Inequality Inc.」を発行した。世界の富裕層上位5人の試算が2020年以降、4,050憶ドルから8,690憶ドルと2倍以上に拡大する一方で、50億人近くがより貧しくなっているという。オックスファムは、現在の傾向が続けば、10年以内に世界初の「兆万長者(Trillionaire)」が生まれるが、貧困の根絶にはあと299年かかると予測している。

オックスファム・インターナショナルの暫定事務局長であるアミターブ・ベハール氏は、「私たちは、億万長者の富が急成長する一方で、パンデミック、インフレ、戦争などの経済的衝撃を何十億人もの人々が被り、分断の10年間が始まるのを目の当たりにしている。この不平等は偶然ではない。億万長者たちは、企業が他の人々を犠牲にして、より多くの富を彼ら自身に提供できるようにしている」と述べた。

報告書によると、億万長者は、世界の大企業トップ10社のうち7社の経営者もしくは主要株主である。また、2023年6月までの1年間で、世界の大企業トップ148社は、合計で1兆8,000億ドルの純利益を上げた。これは、2018年から2021年の平均純利益と比較すると、52%の急増である。2022年7月から2023年6月までに大手企業96社が得た利益100ドルごとに、82ドルが富裕層株主に支払われていたことになるという。一方で、世界の大企業1,600社以上に関するWBA(World Benchmarking Alliance)のデータを、オックスファムが新たに分析した結果、労働者に生活賃金を支払うことを公約し、バリューチェーンにおいて生活賃金を支援している企業は全体の0.4%であることが明らかになった。

オックスファムは各国政府に対し、公共サービス、企業規制、独占企業の解体、恒久的な富裕税と超過利潤税の制定などを通じて、社会の格差を迅速かつ抜本的に縮小するよう求めている。



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