IMF、パリ協定に沿った炭素税導入を推奨、CPLCは、政策への導入を求める報告書を発表
2019年10月10日
国際通貨基金(IMF)は、気候変動の抑制に関する財政政策の分析を発表した。分析によれば、世界経済や生命に損失や損害を与える気候変動を抑制するために、各国の財務省は政策においても中心的な役割を担うべきであるとし、適正な炭素税導入などの気候変動対策に踏み出すよう訴えている。
発表の中で、エネルギー利用を削減し、クリーンエネルギーへと移行するインセンティブを付与するためには、炭素税が最も強力かつ効率的なツールであると述べている。温暖化による気温上昇を2℃以下に抑えるためには、GHG排出量の多い国は2030年までに1トン当たり75ドルの炭素税を導入すべきであると主張している。これは、一般家庭の電気料金が今後10年で平均約43%上昇することを示しているが、同時に、税収は法人税や所得税など他の課税からの削減に充てられることが見込まれる。また、政府は、事業への影響を強いられる石炭採掘業などへの支援や、グリーンエネルギーへの投資、持続可能な開発目標(SDGs)のための資金などに税収を充てることが検討できるという。
同時に、民間企業からもアクションを求める声が上がっている。カーボン・プライシング・リーダーシップ連合(CPLC)の「カーボン・プライシングと競争力のハイレベル会合(仮訳)(High-Level Commission on Carbon Pricing and Competitiveness)」は、産業界や政府に対し、骨太なカーボン・プライシング政策の導入を求める報告書を発表した。同会合には、主要なグローバル企業のCEOや上級役員、政府の元高官、学者等が参加している。
報告書では、カーボン・プライシングは温暖化対策として柔軟性のある低コストのアプローチであり、炭素排出量の低い企業にとっては有利に働き、新たな産業の後押しや技術革新に結び付く可能性があるとしている。例えば、炭素税を導入したカナダのブリティッシュ・コロンビア州においては、クリーンテクノロジーの新たなセクターが誕生し、200以上の企業が年間17億ドルを売り上げている。また、スウェーデンでは、エネルギーや資本、労働力に対する限界税率を大幅に引き下げる政策とともに、世界で最も高いCO21トン当たり127米ドルの炭素税を導入しているが、1990年から2015年までの間にGDPは75%上昇し、GHG排出量は26%削減を達成している。スウェーデンは、炭素税による国際競争力へのインパクトに対処した成功例として挙げられている。
同報告書は世界経済フォーラム(WEF)の「CEO気候リーダーズ同盟(Alliance of CEO Climate Leaders)」、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)、ウィー・ミーン・ビジネス連合、国際商業会議所(ICC)を含む産業界から幅広い支持と承認を得ている。