2024年12月 9日

人権とビジネスに関する研究所(IHRB)は、国際人権デーに合わせて2025年に注目すべきビジネスと人権の課題トップ10を発表した。本リストでは、多国間主義の崩壊、暴力的紛争の拡大、業界を変える法律、気候変動対策の惰性など、不確実性を背景とした重要な問題を探っている。

国際市場と制度が長らく国際秩序を支えてきたが、現代は紛争や分断、不確実性が増している。国連の「未来のための協定(Pact for the Future)」が国際協力の再構築を目指すものの、暴力的対立や政治的困難、反体制的な選挙結果が目立つ状況である。この不安定な環境で企業には、責任ある行動をどのように強化できるのかが問われている。

IHRBが示す人権の課題トップ10は以下の通りである。
1. 再エネ急拡大における説明責任の確保
再エネ産業企業は土地、水、地域社会への影響について説明責任を果たすべき。人権・環境影響評価と透明性強化が重要

2. 金融による紛争の助長を防止
気候への取り組み等に金融は重要だが、汚職と不正な資金の流れは紛争の主要因。人権リスク評価とその結果を考慮した資金提供が重要

3. AIリスクへの対応
AI技術による差別やプライバシー侵害等を防ぐため、人権尊重に関する枠組みや規制の導入が必要

4. 海運の危険への対応
闇船団等の悪習は海洋活動と船員の安全にとって脅威。摘発強化のほか、関連企業のデュー・ディリジェンスも重要

5. 戦争で荒廃した国家の再建
復興プロジェクトでは、人権やコミュニティ関与軽視のリスクも。ガバナンスが脆弱な環境では、透明性と公平な開発の積極的な推進が不可欠

6. 国際人道法の遵守
紛争地域での企業活動には虐待への加担など深刻なリスクが存在。労働者と地域社会の安全確保が最重要。国際人道法のもとに企業の責任ある行動を促進

7. 義務的措置の実施
欧州のCSDDDやCSRDのもと、企業の人権デュー・ディリジェンス義務化への対応準備が必要

8. 移民が活躍できる社会づくり
地政学的緊張の激化などにより反移民感情の高まるなか、移民労働者の権利保護とその貢献の公正な評価が必要

9. 職場における多様性の推進
誤解や偏見のもとに、企業のDEI取り組みを批判する批評家や投資家も。企業は取り組みから撤退せず業績を検証し有益性を明確に示すべき

10. 気候アクションへの信頼回復
2050年ネットゼロへの中間点を前に、2025年は各国が気候対策を軌道修正する最後の機会。企業にも人権・環境デュー・ディリジェンスのもと人を中心に据えた気候対策の確保が必要


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