2022年9月14日

欧州委員会は、強制労働により生産された商品を全面禁止する規則案を発表した。EU生産品の域内市場販売・輸出および域外からの輸入品販売に適用する方針で、特定企業や産業分野に限定しない。同規則の導入は、2021年の欧州委員会施政方針演説で発表された政策のひとつであり、規則施行までの移行措置として、2021年7月には強制労働リスク対策のガイダンスが発表されている。また2022年2月に発表された企業責任デュー・ディリジェンス指令案では、国際サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンスの実施を義務づけている。

強制労働に従事させられている被害者数は世界で2,760万人に上ると言われる。欧州委規則案は、国際的合意に基づく定義と基準を採用した。規則導入にあたってはリスクに基づくアプローチを採用するものとし、市民からの通報、強制労働リスクの高い商品や地域に関するデータベース、企業によるデュー・ディリジェンスなど、多様な情報源からの情報に基づいてリスクを判断する。

各国の管轄機関には、強制労働が疑われる商品について企業への情報請求やEU域内・域外での調査権限が与えられる。強制労働の証拠を発見した場合、市場からの商品撤去、販売・輸出の禁止を命令、また生産企業に商品の廃棄処分を命じる。リスクに基づくアプローチを取ることから、調査にあたっては企業の事業規模や財務状況、リスクの高さを考慮し、中小企業には支援ツールを提供する。

同規則案は欧州議会・EU理事会による審議・承認を経て施行され、施行後24カ月後から適用が開始するものとする。欧州委員会は、同規則施行後18カ月以内にガイドライン文書を発表する。