欧州中央銀行(ECB)、EU圏内の金融リスク・マップ2019年版を公表
2018年11月 1日
欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏内の金融リスクを示す「SSMリスク・マップ」2019年版を公表した。ECBはユーロ圏の金融政策と監督責任を担う機関で、毎年ユーロ圏内の各国の金融監督庁(NCAs:national competent authorities)と協働してユーロ圏内の金融機関のリスクの特定と評価(アセスメント)を実施している。本リスク・マップは、今後2、3年のユーロ圏内の金融システムにおいて予想される主要なリスクを示すもので、リスクが発生する可能性を横軸に、リスクの影響を縦軸に図表化したもの。2019年で最も重要とされる3つのリスクは以下のとおり。
・地政学的な不安定要素
・現在残された不良債権および将来的に発生しうる不良債権
・サイバー犯罪とITにかかる混乱
他にも低金利、金融規制、不動産、気候変動に係るリスク等がマップ上で示された。
前年のリスク・マップと比較すると、ユーロ圏内の経済・財務状態に起因したリスクは景気循環により減少しているが、地政学的な不安定要素や金融市場の金利改定リスクは高まったといえる。また、既存ITシステムやサイバー攻撃に対する銀行の不十分な対応について、デジタル化の進歩により関連リスクが高まったとしている。
SSMとは、「単一監督メカニズム(Single Supervisory Mechanism)」を指す。EU全加盟国の強固な金融フレームワークを構築する「銀行同盟」が掲げる大きな3つの柱のうちの1つで、他の柱としては「単一破綻処理メカニズム(Single Resolution Mechanism、SRM)」および「預金保険制度(Deposit Guarantee Scheme, DGS)」がある。SSMは、ECBがユーロ圏内の銀行に対する単一の監督権を持つ仕組みで、SRMは迅速な意思決定と破綻処理を危機の際に行い、他のユーロ圏の国々への伝播を防ぐ仕組み。DGSはEU共通ルールとして各国が預金者一人あたり10万ユーロまで保護し、銀行破たんから7日以内に支払われる仕組みである。