2020年9月11日

CDP、気候変動開示基準委員会(CDSB)、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、国際統合報告評議会(IIRC)、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の5団体が、包括的な企業報告に向けた「共有ビジョン」とそれを達成するために協調して取り組む「共有コミットメント」、および「共有マーケット・ガイダンス」を示した文書「包括的企業報告に向けて協働するための文書(仮訳)(Statement of Intent to Work Together Towards Comprehensive Corporate Reporting)」を発表した。サステナビリティ分野の情報公開において主要な役割を果たすこれらの団体がビジョンを共有し、連携するのは初の試みであり、同文書は企業報告の未来に向けての大きな一歩である。

「共有ビジョン」では、既存のサステナビリティに関する基準やフレームワークが、一般に公正・妥当と認められた会計基準(GAAP) をどのように補完し、一貫した包括的な企業の報告システムの基盤となりうるかを議論している。進行中のプログラムを通じた各団体間の深い連携によって、この目的が達成されるとしている(「共有コミットメント」)。サステナビリティ分野の情報公開については、複数の団体が様々な役割を果たしており、企業や投資家には混乱を招く状況ともなっていることから、こうした共有ビジョンは非常に重要である。

また、多様なフレームワークと標準が追加的にどう導入されるべきかについては「共有マーケット・ガイダンス」で示されている。フレームワークや標準の各役割を明確にすることで、サステナビリティ関連の情報開示を取り巻く複雑性を解説し、情報の構造化、共有・比較を可能とする技術や分類法の役割、公開されたデータのプラットフォームの重要性について説明している。

サステナビリティ分野の情報は、伝統的な財務情報と比べ、ステークホルダーが幅広く、一つの基準やフレームワークでは十分ではない。今回発表された文書では、統合報告によって結びついた財務会計とサステナビリティ分野の情報公開の双方を含む、包括的な企業報告に必要なビジョンが提示されている。

一方、ESG分野の企業報告を世界的に調和させる動きもある。責任投資原則(PRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は、持続可能な金融システムの創造に向け新たに協力していくことを発表した。意思決定に有効なサステナビリティ関連の情報をどのように見分け、用いるかについて、投資家と企業間の直接的な対話を促進し、投資や戦略決定においてサステナビリティが中心となることを目指している。