2020年9月 4日

カーボン・トラッカーは、「プラスチックに未来を託すことはできない(仮訳)(The Future's Not in Plastics)」と題するレポートを発表した。同レポートは、石油化学産業による約4,000億ドルにのぼる投資が座礁資産になるリスクを指摘している。

気候目標達成に向けた対策が強化される中、石油化学産業は、プラスチック需要に未来を託すかのように今後5年間でさらに約4,000億ドルの投資をしようとしている。ただ、プラスチックの使用削減の取り組みも世界的に進められている。今後未使用のプラスチックの需要の伸びは年率4%から1%未満に抑えられ、2027年にはプラスチック利用はピークを迎えるだろうと同報告書では予測している。さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)・パンデミックの影響により、本年のプラスチック需要は約4%削減される可能性がある。EUや中国では既に様々な政策ツールを用いてプラスチック廃棄物対策を進めつつある。例えば、EUでは本年7月にプラスチック廃棄物に対して1トンあたり800ユーロの税を課すという案が提出された。最大のプラスチック廃棄物の受け入れ国であった中国は2018年にその輸入及び処理を停止した。そのため輸出していた国は国内で廃棄物を処理しなければならなくなっている。報告書では、プラスチックは二酸化炭素の排出、有害ガスによる健康被害、収集コスト、および海洋汚染に関連して、1トンあたり少なくとも1,000ドル、年間3,500億ドルの外部コストがかかっていると試算している。

しかしながら、英国の国際油資本BPや国際エネルギー機関(IEA)はプラスチック需要が今後の石油需要の最大の推進力となるとし、その伸びに期待しているという。すでに生産過多により原料価格の記録的な低下に直面しているにもかかわらず、投資が継続されれば、座礁資産になるリスクは避けられず、投資家に多大な損失を与えることになるとカーボン・トラッカーでは警鐘を鳴らしている。