2023年3月22日

グローバルに展開する資産運用会社のロベコは、3回目となる年次気候調査を実施し、報告書「2023年世界気候調査」を発表した。300もの世界の大手機関投資家や金融商品仲介事業者(ホールセール事業者)を対象に、気候変動に伴う機会やリスクへの投資家の意向を調査した。全回答機関の運用資産総額は約27兆4千億米ドルに相当する。

本調査で、2050年温室効果ガス排出量ネットゼロを公約に掲げた、もしくはその過程にある投資家の割合は、昨年の45%から微増し48%となったことが分かった。半数以上の投資家(55%)が、自身のポートフォリオが炭素排出量に与える影響を評価しており、マテリアリティ(重要課題)評価に大きな進展があったといえる。しかし、出張や廃棄物処理などの間接的排出量を測定した投資家はわずか20%と、課題が残ることが分かった。さらに、投資先企業の排出経路に対する将来展望を把握していた投資家は27%にとどまったという。一方、25%の投資家が気候変動シナリオを既に資本市場予測に組み込んでいるか、今後12カ月以内に組み入れる可能性が高いとしており、気候変動シナリオの活用が広がっているといえる。

また、過半数(51%)の投資家が、エネルギー危機を通じて再生可能エネルギーを推進する重要性を強く認識したものの、ポートフォリオにおける脱炭素化の取り組みを加速させた投資家は30%にとどまることがわかった。

注目すべきは、気候変動と同じぐらい、生物多様性への懸念が高まっていることだ。半数近く(48%)の投資家が、生物多様性は投資方針の中核もしくは重要要素であると答え、今後2年間でこの割合は66%に増加する見通しだ。

最後に、投資家に対する政治的圧力が増していることと、圧力には地域差があることも明らかになった。米国で反ESG運動が活発化し、北米では47%の投資家が自身のサステナブル投資計画に対する政治的・法的抵抗の増大を懸念しているのに対し、欧州ではその割合は30%にとどまった。