2023年6月15日

米国国務省は、人身売買被害者保護法(TVPA)に基づき年次発行されている「人身取引報告書(仮訳)(Trafficking in Persons Report)」の2023年版を発表した。日本は、2020年から4年連続で第2階層(政府は人身売買撲滅に向けてTVPAの最低基準を満たしていないものの、基準達成に向けて重要な取り組みを行っている)とされた。

報告書では、世界のおよそ200カ国について、「第1階層(TVPAの最低基準を満たしている)」から「第2階層」、「第2階層の要注意国」、「第3階層(TVPAの最低基準を満たしておらず、基準達成に向けた重要な取り組みも行っていない)」の4つのレベルに分類しており、第3階層に分類された国々は、米国政府による経済制裁の対象となり得る。2023年は、中国、北朝鮮、ロシア、アフガニスタン、南スーダン等24カ国が第3階層に分類された。

日本については、外国人技能実習制度のもと強制労働が続いていることが問題視され、外国人技能実習制度の見直しを検討する有識者会議の設置や、子どもの性被害防止に関する取り組みを評価された一方で、労働搾取や児童の性的搾取を目的とする人身取引の事例の捜査・刑事訴追への政治的意思の欠如が指摘された。また、すべての都道府県で人身取引の被害者に十分なサービスが提供されておらず、男性被害者の受け入れ可能なシェルターがないこと、多くの場合、女性や子どもの人身売買の被害者がシェルターを利用するために仕事や学校を辞めざるを得ないことなどが報告されている。