2020年6月25日

米国務省は2020年版の「人身取引報告書(仮訳)(Trafficking in Persons Report)」を発表した。米国政府が人身取引に関して外国政府と協議する際の重要な外交ツールとしても活用されている同報告書は、各国政府の他、非政府組織にも利用されている。

報告書は、人身売買被害者保護法(TVPA)の「人身取引撲滅のための最低基準(MINIMUM STANDARDS FOR THE ELIMINATION OF TRAFFICKING IN PERSONS)」の順守に向けた、政府の取り組みの程度に応じて各国を4つの階層(第1階層、第2階層、第2階層ウォッチリスト、第3階層)に分類している。ただし、最高水準の第1階層にランク付けされた国でも、その国に人身取引の問題がないことを意味するものではない。政府が問題に対処するために対策を実施し、TVPAの最低基準を満たしていることを示す。最高水準のランキングを維持するためには、政府は毎年、相当程度の進捗を示す必要がある。

日本は、前年までの2年連続の第1階層の評価から今年は第2階層へ(TVPAの最低基準を満たしていないが、政府が基準達成に向けた意義ある取り組みを行っている国)ランクを下げた。報告書は、引き下げの理由として、外国人技能実習制度に関連した強制労働や援助交際など人権問題を取り上げ、「取り組みへの真剣さや持続性が前年までと比べて不十分である」と説明。外国人の強制労働が報告されているにもかかわらず、摘発件数が減り、刑罰が軽いことなども指摘。また、児童売買における事件に関する統計の公表が不十分であるとした。

今年は22カ国がランクを上げ、そのうち13カ国がサハラ以南のアフリカの国であり、ナミビアがアフリカ初で唯一の第1階層にランク付けされている。第3階層として評価された国には、中国やキューバなど19カ国が挙げられている。