2021年11月 4日

英シンクタンクのカーボン・トラッカーは、アジアの上場企業が所有する稼働中及び新設予定の石炭火力発電所の座礁資産化リスクが1,100億ドルにのぼる可能性があるとするレポートを発表し、投資家へ警鐘を鳴らした。現状維持シナリオと国際エネルギー機関(IEA)の気候シナリオのひとつB2DSシナリオ(※)に照らして発電所の営業利益の違いを試算し、低価格の再生可能エネルギーの台頭や炭素価格導入により、明らかに不採算となるリスクのある座礁資産を分析している。

本レポートによると、インドのボンベイ証券取引所の座礁資産化リスクは590億ドルでもっとも高く、次いで東京証券取引所が220億ドルとなっている。座礁資産化リスクの半分以上となる650億ドルをわずか10社が占めており、その内訳は190億ドルのリスクを抱えるインド火力発電公社(NTPC)を筆頭にインド企業6社、日本企業は電源開発(J-POWER)と東北電力の2社、韓国企業とマレーシア企業がそれぞれ1社である。また、上場企業の新規の化石燃料プロジェクトの潜在的な座礁資産は490億ドルであると試算。投資家に注意を呼びかけ、投資家や証券取引所が、座礁資産化リスクを抱える上場企業に対して、移行計画やパリ協定との整合性などについての情報開示を求めるとともに、上場するための開示要件を標準化する必要があると訴えている。

また、環境NGOの気候ネットワークは、プロジェクト・ファイナンス案件に関する金融業界の融資ガイドライン「赤道原則(エクエーター原則)」に署名した銀行が、少なくとも200件の化石燃料プロジェクトへの融資に関与していると発表。日本の銀行では三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行などが含まれている。パリ協定の1.5℃目標を支持するという本原則のコミットメントを果たし、新規化石燃料プロジェクトやインフラ建設への融資を認めないことを再確認する必要があるとしている。


※IEAのBSDS (beyond 2 degrees)シナリオとは、気温上昇約1.6℃を見込む最も野心的シナリオのひとつでデータの裏付けの詳細が取れている。