日本におけるBOPビジネスは、2010年の経済産業省、国際協力機構(JICA)など公的機関による支援の開始を皮切りに、その認知度は急速に広まりつつある。BOPビジネスの捉え方も、BOP層を消費者として考え、廉価な商品を開発・販売していく、との流れから、ステークホルダーを事業パートナーとしてとらえ、ビジネスを通じた開発課題への試みとして、共に事業を作り上げていくといった、パートナー連携が重視され始めている。

多様な連携パートナー

BOPビジネスにおけるパートナーと言ってもBOP層だけではなく、開発援助機関・援助国機関、国際・現地NGO/NPO、マイクロファイナンス機関・ソーシャルファンドなど多岐にわたる。昨今のBOPビジネスでは、これらパートナーと個別に連携するのではなく、統合的に連携し、事業を構築していくことが求められている。

企業としては、これらの連携パートナーの特徴を理解した上で、連携方法を構築していくことが重要である。特に、開発援助関係者の究極的な目的は、国連が掲げたミレニアム開発目標(MDGs)の達成にある。その中で、彼らが企業と連携を模索し始めたのは、①ODA以外での民間からの支援獲得、②事業で利益を生むことで、開発効果が継続的に担保される、の2点が理由であると言える。

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開発援助・援助国機関との連携

企業にとり開発援助・援助国機関との連携は、事業開発段階で資金的援助を受けることもあるが、プロジェクトの信頼性の向上やネットワークの活用などのメリットも考えられる。

国連開発計画(UNDP)では、官民連携プログラムとしてGrowing Sustainable Business(GSB)を提供しており、企業へのマッチング支援や資金協力を行っている。また、米国国際開発庁(USAID)では、Global Development Alliance(GDA)、Global Frameworks、Global Development Commonsなどの支援プログラムがあり、それぞれパートナシップ、資金提供、知識・ノウハウ共有などの支援を提供している。

日本でも、JICA、経済産業省、JETROなどがBOPビジネスの支援に乗り出している。JICAでは、2010年にBOPビジネス連携促進調査事業を開始し、フィージビリティ・スタディの支援を目的とした「協力準備調査(BOP連携促進」や民間技術の普及や開発課題への利用の促進を目的とした「民間技術普及促進事業」を行っている。また、中小企業の海外展開支援を目的とした「案件調査」、「普及・実証事業」等のメニューも増やし企業の海外展開支援の内容を拡充してきている。

NGO/NPOとの連携

企業にとり国際・現地NGO/NPOとの連携は、ローカル情報の収集や製品の開発・販売、施設の運営など事業面でのメリットが考えられる。一方で、数多くあるNGOの中からどのようにNGO/NPOを選定するべきかと悩む企業も多いのではないか。

NGO/NPOの選定では、JICA、国連機関などの開発援助機関に問い合わせてみることが有効である。彼らはこれまでの経験から現地のNGO/NPOにネットワークを持っている。一方、NGO/NPOは、提供されるサービスや商品の質に対して企業とは違う考え方を持っている点は注意が必要である。彼らの目的は、貧困の削減など開発目標の達成であるため、地元住民にとり使い勝手がよく、廉価な製品が選択される。

マイクロファイナンス機関・ソーシャルファンドとの連携

BOPビジネスの推進において、資金調達が課題になることは多い。グローバル企業など資金力のある企業は別であるが、中堅中小企業にとっては重要である。企業にとりこれらの機関との連携は、第一に資金調達がある。一方で、彼らは現地ネットワーク、BOP市場での資金回収、事業の社会性評価といったノウハウも持っている。このようなノウハウは企業では持ちえないものであり、自社事業の社会性を強化するには活用が可能であると考える。

BOPビジネスでは、これまでと同じ製品開発、マーケティング手法を用いた事業立ち上げは通用しない。これは、ビジネスを通じた開発課題への試みであり、より多様なステークホルダーのニーズを統合的に解決する必要があるためだ。このような取り組みには、パートナーとの連携が重要であり、企業もパートナーとの対話の中から連携方法を構築することが求められる。


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