vol.4 「サステナビリティに関する世界のCEOの意識調査」など (2013年10月31日)
こんにちは。イースクエア代表の本木啓生です。
10月の中旬にロンドンで、米FSG(非営利のコンサルティング会社)が主催す
るCSV(共通価値の創出)のワークショップに参加してきました。米国、カナ
ダ、チリ、エクアドル、ロシア、ドイツ、トルコ、タイ、インドなど、実に様
々な国のコンサルタントが参加しての活気ある3日間でした。
CSVは、FSGの創立者でもあるマイケル・ポーター氏とマーク・クラマー氏が10
年以上の歳月を費やし構築してきたコンセプトであり、現在もFSGを中心に開
発が続いています。今年9月のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された
最新の論文「シェアード・バリューのためのイノベーション
(Innovating for Shared Value)」では、CSVを推進する上での要点をまとめ
た考察を発表しています。CSVは、社会課題の解決と、新たなビジネスの創出
やコスト削減などにより収益獲得の両方を同時に追求するというのが、基本的
な考え方となっています。
社の事業活動を通してサステナビリティ課題に取り組んでいくことは、まさ
にCSRの真骨頂ですが、自社の特徴や強みを活かし社会の課題に対応していく
ことで、新たな事業の成長機会を得るというCSVの考え方は経営者の理解を得
られやすくもあるようです。もちろん、経営学者として高名なポーター氏のネ
ームバリューも手伝ってのことでしょう。
「イースクエア」は「Eの二乗」を意味し、エコロジーとエコノミーが両立する
社会を創ろうと設立された会社です。イースクエアが創業以来言ってきたこと
はまさにこの社会価値と事業価値の両立ですが、従来のCSRの枠組みではなかな
か取り組みが進まないという企業はCSVのコンセプトの活用を検討してみては
いかがでしょう。時には「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」でものご
とが動くこともあります。
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◇◆ 目次
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〔1〕注目CSRニュース - 「サステナビリティに関する世界のCEOの意識調査」
〔2〕オルタナCSR monthly寄稿記事紹介 - 「環境と社会に価値創出する紙産業への挑戦」
〔3〕CSRお悩み解決 - 「CSRの考え方の整理と図式化」
〔4〕イベント報告 - 「未来のメガトレンド"サステナビリティ"から捉える
未来予測2025と中長期戦略」
〔5〕コンパスプラス - 「タンザニア干しいもプロジェクトの経過報告」
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〔1〕注目CSRニュース - 「サステナビリティに関する世界のCEOの意識調査」
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このコーナーでは、企業のCSR担当者向け情報サイト、「CSRコンパス」
http://www.csr-compass.jp
から注目ニュースをピックアップしてご紹介します。
今回取り上げるニュースは、「サステナビリティに関するCEOの意識調査」です。
<CSRコンパスの9月のニュースから抜粋>--------------------------------
国連グローバル・コンパクト(GC)とアクセンチュアは、サステナビリティに
関するCEOの意識調査結果を発表した。
この調査は、世界103カ国のCEO1,000人を対象に行われたもので、CEO75人(う
ち日本人が9人)との詳細インタビューや、サステナビリティ分野のリーダー
的存在でありかつ市場をリードする好業績を上げている企業の分析も行っている。
その結果、調査に参加したCEOの3分の2以上(67%)が、世界が直面するサス
テナビリティ課題に対する企業努力は十分ではないと回答。多くのCEOがサス
テナビリティを会社組織全体に組み込むことに強いコミットメントを示してい
るものの、サステナビリティ分野の先進企業に対するインセンティブなど、民
間セクターの潜在能力を引き出す政策が必要だと考えていることも明らかにな
った。また、企業、政府、政策立案者のさらなる連携の必要性が指摘されてい
るほか、サステナビリティの取り組みの障害となっているものとして、資金不
足、経済情勢などが挙げられている。
その他の主な調査結果は以下の通り。
・サステナビリティを将来の事業成功にとって重要であると回答したCEOは93%
・サステナビリティを成長やイノベーションの機会と捉えていると回答したCEO
は78%
・サステナビリティに関する企業評価は消費者の購買決定において重要である
と回答したCEOは81%
・投資家からの圧力がサステナビリティ取り組みの動機となっていると回答し
たCEOは12%
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「サステナビリティを将来の事業成功にとって重要であると回答したCEOは93%」
・・・皆さんはこの調査結果をご覧になってどう思われましたか?
サステナビリティに対する経営者の理解度はずいぶん高いのだな、というのが
第一印象ではないでしょうか。実は、同様の調査は2010年にも実施されており、
その際にも93%のCEOが「自社が将来成功するためにはサステナビリティが重
要なポイントになる」と回答しています(下記ニュースリリース参照)。
最高経営責任者の大多数が、サステナビリティ(持続可能性)は事業の成功に
不可欠で、 今後10年間でコア・ビジネスに完全に組み込まれる可能性があると
考えていることが判明
http://www.accenture.com/jp-ja/company/newsroom-japan/Pages/news-releases-20100624.aspx
これを見ると、3年も前から素晴らしい調査結果が出ている割に、企業の取り
組みはそれほど進展していないのでは?と思う人もいるのではないでしょうか。
考えてみれば、普通の人よりコミュニケーション能力が高く、相手の期待を読
むことが得意であろう大手企業CEOのことです。「サステナビリティは経営に
とって重要」という質問者の意向が明白なアンケートに対し、「当社はサステ
ナビリティとは関係がない」、「私はサステナビリティに関心がない」などと
答える方が考えにくく、多少割り引いて考える必要があるのかもしれません。
それはさておき、注目したいのが、2010年と2013年で奇しくも同じ数字だった
「93%」の内訳です。93%は「非常に重要」、「重要」と答えたCEOの合計な
のですが、2010年は「非常に重要と答えたCEOが54%だったのに対し、2013年
にはそれが45%に減少しているのです。この報告書では、CEOの大半はサステナ
ビリティは依然重要だと考えているものの、それが本当に市場の競争要因にな
るのか、懐疑的な見方をするCEOが増えているのではないか、と解説していま
した。今後それがどう変化していくのか、気になる傾向です。
報告書ではまた、サステナビリティ分野でリーダーと考えられている企業のう
ち、好業績を上げている企業のCEOの特徴も分析しています。
・サステナビリティへの投資は投資家の関心に適っていると考えている
・NGOやその他組織など、セクターを超えたパートナーシップを重視している
・サステナビリティのパフォーマンスを測り、社員の評価・報酬に反映する
ことが重要だと考えている
報告書には他にも興味深いデータが掲載されていますので、ぜひご覧になって
みてください。
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〔2〕オルタナCSR monthly - 「境と社会に価値創出する紙産業への挑戦」
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イースクエアでは、オルタナが毎月発行しているニュースレター「CSR month
ly」に寄稿を行っています。このコーナーでは、オルタナ編集部の許可を得て
寄稿文をご紹介します。
「環境と社会に価値創出する紙産業への挑戦」
イースクエア エクベリ 聡子
日本国内では、環境意識の高まりや情報の電子化、ペーパーレス化の動きによ
り、紙の消費量は減少傾向にある。しかし世界に目を転じると、紙の消費量は
増加を続けている
2011 年の世界の紙・板紙生産量は約 4 億 t で、前年比 1.2%増。国民一人
あたりの消費量を見ても、日本が 220kg/ 年に対し、中国は 72kg/ 年、世界
平均は 57kg/ 年であり、今後も新興国、途上国の消費量が増えることが予測
されている。
一方、世界では森林減少や生態系破壊の問題が深刻化していて、紙の原料にな
る木質パルプをいかに持続可能にするかといった取り組みと、非木材での代替
素材の開発が重要な課題の一つである。
・・・以下全文は下記PDFをご覧ください。
https://www.e-squareinc.com/reports/pub_pdf/CSRmonthly_vol13_ES.pdf
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〔3〕CSRお悩み解決 - 「CSRの考え方の整理と図式化」
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このコーナーでは、CSR/サステナビリティの分野で寄せられたご相談とそれに
対するイースクエアのご支援内容(解決策)をご紹介します。皆さまのお悩み
解決のヒントになれば幸いです。
◆ご相談内容 「CSRの考え方の整理と図式化」
A社にはグループのCSRに対する考え方をまとめた方針がありました。しかし、
それは策定されてから5年以上が経っており、現在のA社の取り組みや今後力を
入れていきたい方向性とはギャップが生じていました。また、CSRの考え方が
文章のみでしか表現されていなかったため、分かりづらいという声が社員から
寄せられていました。そういった状況を踏まえ、CSRの考え方を改訂するとと
もに、それを一目で分かるよう図式化して欲しいとのご相談を頂きました。
◆イースクエアのご支援内容
まず、A社がCSRの考え方を改訂するにあたっての社会背景、改訂の目的、想定
する効果を整理しました。次に、同社の経営理念、行動規範、各種方針などと
CSRの考え方の関係の整理を行いました。そのうえで、CSRの考え方に盛り込む
べき要素や言葉を挙げ、それを組み合わせて文章にしていきました。
また、経営理念、行動規範、各種方針などとの関係を含め、CSRの考え方をシ
ンプルな図式で表現し、詳細な説明をしなくても社内外の人がビジュアルに理
解できるようにしました。
最近「責任」にフォーカスした受動的なCSRから、事業を通じて社会課題の解
決を図り、事業も伸ばしていくという能動的なCSRが注目されるようになって
います。「CSRの考え方」は全ての取り組みの土台になりますので、具体的な
アクションに力を注ぐ前に、まずは土台から見直すというA社のようなアプロ
ーチも一考に値するのではないでしょうか。
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〔4〕イベント報告 - 「未来のメガトレンド"サステナビリティ"から捉える
未来予測2025と中長期戦略」
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戦略立案において最も重要なのは
「将来の世界観」と「変化のシナリオ」をきちんと持つこと
イースクエアでは、2025年の未来を展望する特別集中講座を開催します。
未来のメガトレンド「サステナビリティ」が、今後、産業界にどのようなイン
パクトを与え、企業の中長期戦略に影響を及ぼすのかについて「未来予測2010
-2025」著書である田中栄氏を迎え、具体的に描いていきます。
サステナビリティ視点と企業戦略との融合が必要であることを実感いただける
セッションとなるかと思います。CSR部門のみならず、経営企画部門、R&D部門
など幅広い部門の方のご参加をお待ちしております。
本セミナーはこんな方にお勧めです。
・CSR経営と経営戦略の融合を図っていきたい
・中期経営計画の検討をしている
・CSRビジョン/重要課題を見直すタイミングにある
・今後社会が必要とする技術やニーズの芽について知りたい
・バックキャスティング発想で戦略的にサステナビリティに取り組んでいきたい
・将来のリスクとチャンスを見極めたい
・新たなビジネスアイデアを模索中
講 師: 田中 栄 氏 (1,000社以上が導入する「未来予測2010-2025」著書)
(株式会社アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー)
『未来予測レポート2013-2025』に関する詳細情報 http://miraiyosoku.jp/
株式会社アクアビット http://www.aquabit.co.jp/
日 時: 2013年11月27日(水)13:00~18:00
対 象: CSR部門、経営企画部門、R&D部門など(企業の方が対象)
受講費: 48,000円(税込) ※初回限定価格
会 場: 東京都港区内を予定(お申し込み頂いた方にご案内いたします)
定 員: 30名(最少催行人数:10名)
申込締切: 11月20日
より詳しい内容やお申し込み方法は下記のお知らせをご覧ください
https://www.e-squareinc.com/news/2013/131018.html
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〔5〕コンパスプラス - 「タンザニア干しいもプロジェクトの経過報告」
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「コンパスプラス」はイースクエアスタッフによるブログです。
その中から注目記事をピックアップしてご紹介します。
「タンザニア干しいもプロジェクトの経過報告」
こんにちは。以前イースクエアのホームページにお知らせを掲載し、7月号の
オルタナプレミアムでもご紹介しましたが、イースクエアでは、今年3月から
タンザニアにおける干しいも事業の調査プロジェクト(フィージビリティ・
スタディ)を実施しています。その一環で7月、9月とタンザニアに行ってきま
した。7月の訪問の目的の一つは、タンザニア最大の国際展示会、通称「サバ
サバ」に出展することでした。
・・・続きはこちら
http://www.csr-compass.jp/member/plus/cat/post_31/
「コンパスプラス」では、他にもブログ形式でスタッフが情報を随時掲載して
います。ぜひご覧ください。
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【編集後記】
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収穫の秋、食欲の秋ですね。今月初めに家族で山梨県に行き、ブドウ狩り、
モモ狩りを楽しんできました。先週末には、自宅の家庭菜園でサツマイモを収穫
しました。春に苗を植えてから夏の間ほとんど手入れをしなかったのにも関わ
らず土を掘り起こしてみるとちゃんとイモができていたのにはちょっと感動し
ました。
ところで、掘りたてのサツマイモを焼きいもにして食べたけど、あまり甘くな
くてがっかりした、という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
サツマイモは60℃前後で時間をかけて加熱すると、酵素(アミラーゼ)が働い
てでんぷん質を麦芽糖に変え、甘味が増すそうです。加熱した石で間接的にサ
ツマイモを調理する石焼きいもはまさにこの原理を使っています。インターネ
ットには焼きいもを甘く焼き上げる方法が載っていますのでぜひ探して試して
みてください。
ひょっとしたら、色々試してみたけど甘くならなかった、という経験をお持ち
の方もいらっしゃるかもしれません(私も経験あります)。若干マニアックな
領域に入りますが、実はサツマイモは収穫した直後にはでんぷん質が多く、糖
度が低いのだとか。それを一定期間低温(13~15℃)で保管することで、でん
ぷん質が徐々に糖化してきて甘いサツマイモになるそうです。それを先の方法
でじっくり加熱すれば、さらに甘くなるというわけです。先日私が訪問した鹿
児島県の農家さんは、自分で掘った50mのトンネルの中にサツマイモを2カ月以
上寝かせ、糖度を上げてから出荷しているそうです。じっくり寝かせたサツマ
イモで作った焼きいもは驚きの甘さでした。普通の人にはなかなか真似できる
ことではありませんが、サツマイモは掘りたてより時間が経ったものの方が甘
い、と覚えておくとよいかもしれません。(担当:柳田)
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