vol.14 CSR速習セミナーオンライン版開始/ ESG情報開示・評価向上支援/ TCFD賛同企業募集(2018年7月2日)
こんにちは。イースクエア代表の本木啓生です。
「企業は、財務パフォーマンスの実現のみならず、株主、従業員、顧客、自社
が操業するコミュニティを含むあらゆるステークホルダーに恩恵をもたらし、
社会に貢献しなければならない」
このメッセージは、グローバルNGOや社会派の経済学者が言ったものではありま
せん。世界最大の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンクCEOが
今年の1月に投資先のCEOに宛てた年次書簡で発したものです。
かねてからCSV(共有価値の創造)の概念を提唱するマイケル・ポーター教授
のもとには、この書簡を受け取った何人ものCEOから、一体何が起こっている
のか?と問い合わせがあったそうです。
日本では2003年がCSR元年と言われ、10年以上の歳月が流れていますが、CSRを
経営の重要テーマとして認識し、企業戦略と一体化させる方向に舵を切る企業
は数えるほどしかありません。有識者や社外取締役、NGOが声高に叫んでも企
業経営者が本気で取り組むことに躊躇する最大の理由の一つは、最も影響力の
大きいステークホルダーである投資家の意向にもあったのではないでしょうか。
投資家の多くは企業の財務パフォーマンスにしか関心がなく、ステークホルダ
ーへの配慮は余力があればやればよいのだ、と捉えてきたと思います。
ラリー・フィンク氏は先述の書簡の中で、企業経営者にこのようなことを促す
理由として次のように述べています。
「年金問題、インフラ、オートメーション(自動化)、労働者の再教育など様
々な課題に各国政府が対処できていないことを私たちは目の当たりにしている。
結果として、民間セクターがより幅広い社会課題に対応し、社会的目的の達成
に向けて役目を果たすよう要求が高まっている」
まさにこのことは、近年機関投資家を含めた社会全体の認識となりつつあると
思います。企業への期待は、短期的な利益をあげることではなく、社会的課題
にも取り組み、その中で中長期的に利益をあげていくことです。中長期的に成
長する企業の条件として、CSR経営の必要性が明確化されつつあります。
ラリー・フィンク氏の書簡はブラックロックのホームページで読むことができ
ます。
LARRY FINK'S ANNUAL LETTER TO CEOS
A Sense of Purpose
https://www.blackrock.com/corporate/investor-relations/larry-fink-ceo-letter
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◇◆ 目次
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〔1〕注目CSRニュース -
「UNEP、使い捨てプラスチックの問題と対策についての報告書を発表」
〔2〕新任担当者・責任者にお勧め 「CSR経営のための速習セミナー(理解編)」
オンライン版開始
〔3〕サービス紹介 - ESG情報開示・評価向上支援 -
〔4〕TCFD事務局、TCFD最終提言への支持企業を募集
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〔1〕注目CSRニュース -
「UNEP、使い捨てプラスチックの問題と対策についての報告書を発表」
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このコーナーでは、企業のCSR担当者向け情報サイト、「CSRコンパス」
から注目ニュースをピックアップしてご紹介します。
今回取り上げるニュースは、「UNEP、使い捨てプラスチックの問題と対策につ
いての報告書を発表」です。
------<CSRコンパス6月のニュースから転載>--------------------------
国連環境計画(UNEP)は、使い捨てプラスチックの問題と対策についての包括
的な報告書「使い捨てプラスチック:サステナビリティのためのロードマップ
(仮訳)(Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability)」を発表
した。
本報告書はインド政府協力のもとで作成され、世界環境デーにインドのニュー
デリーでモディ首相とUNEPによって発表された。使い捨てプラスチックにかか
る課題分析、汚染対策に向けた法的措置を含む取り組みの紹介と進捗状況につ
いて世界規模での見通しを示した。60カ国以上の事例もケーススタディとして
紹介されている。
本報告書では、プラスチック汚染対策が世界中で進展を見せていること、法規
制の範囲の広がり、そして法律が施行されるまでのスピードが速くなっている
ことなどを評価している。また、使い捨てプラスチックの使い過ぎへの具体的
な対策として、廃棄物処理マネジメント方法の行政へ提言、環境負荷の低い代
替素材の利用、消費者の啓発、自主的なプラスチックゴミの削減努力、使い捨
てプラスチック製品の利用と販売にかかる規制などを提案している。最も効果
的な対策として行政による法規制や課税が挙げられている。ゴミ削減のために
企業や民間ステークホルダーから幅広く協力を得る必要性を訴えつつ、プラス
チック製品生産者の責任を拡大し、循環型経済の観点で上流から対策を講じる
インセンティブが重要だ、とまとめた。
なお、世界中のプラスチックゴミの47%(2015年)を占める使い捨てプラスチ
ック容器ゴミの半分はアジアから発生しているが、一人当たりのプラスチック
容器ゴミの量は米国、日本、EUが突出していることを指摘した。他方で、ドイ
ツ、日本、南アフリカの飲料生産業者によるペットボトルのリサイクル事業を
好事例として挙げている。日本は使い捨てプラスチック容器の使用に関する法
規制がない中でも、高い社会規範により自主的にプラスチックゴミ回収に取り
組み、高い廃棄物処理技術を駆使した結果、プラスチックゴミが環境に及ぼす
影響が最小限に留まっている、と報告している。
------<転載ここまで>------------------------------------------------
今回は国連環境計画(UNEP)が発表したプラスチック製品による汚染と対策に
関するニュースを取り上げました。使い捨てのプラスチックごみへ問題意識は、
世界各地で急速に高まっています。
英国では、国家計画として2042年までにプラスチックごみを撲滅することが発
表されています。先日も欧州ではプラスチックごみによる環境汚染への懸念か
ら、使い捨てプラスチック製品を禁止または削減する新たな案が欧州議会に提
出されました。その内容は、使い捨てのプラスチック製の食器や容器、飲料カ
ップ、スプーンやフォーク、ストローなどを禁止または使用を制限し、国別に
削減目標を掲げることや、飲料ボトルの回収率を2025年までに90%以上にまで
高めていくことなどが盛り込まれています。これらは、プラスチック製品の生
産者や提供者、使用者に今後大きな影響をもたらすものと言えるでしょう。
こうした動きは各地で広がっており、例えば、国際オリンピック委員会や国際
的なスポーツ連盟、20ヵ国以上のオリンピック委員会も、プラスチックごみの
削減や啓発活動に取り組んでいくことを表明しています。
また、今回のUNEPの報告書は、インド政府の協力の下で作成され、首都ニュー
デリーでモディ首相と共に発表されたという点も注目されます。ひと昔前まで
は、環境問題への対策や廃棄物処理の技術などは欧米先進国が主導してきまし
たが、今日では新興国がこうした動きのリーダーシップをとるようになってき
ていることを象徴しています。
報告書では、プラスチックの汚染対策が世界各地で進展していること、法規制
のスピードが速くなっていることが評価されています。今日、プラスチック製
品は、私たち消費者の日常生活の中にあらゆる場面に組み込まれています。
ペットボトルを使用する飲料メーカーだけでなく、数多くの企業がバリューチ
ェーン上の各所でプラスチック製品を利用しているでしょう。
今後、石油由来のプラスチックに代わるサステナブルな代替品の登場や、製品
の回収とつながる新しいビジネスモデルの誕生など、経済活動にもその影響が
広まっていくでしょう。企業活動への影響が直接的であれ間接的であれ、加速
しつつある使い捨てプラスチック製品の削減や禁止に向けた動きを、企業はウ
ォッチしておく必要があるでしょう。
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〔2〕新任担当者・責任者にお勧め 「CSR経営のための速習セミナー(理解編)」
オンライン版開始
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「CSR担当者に必要なことを1日で凝縮して学べる」とご好評をいただいている
人気セミナー「CSR経営のための速習セミナー(理解編)」のオンライン版が2018
年春よりご受講いただけるようになりました。
これまで開催日程や場所の関係でご都合が合わなかった方でも、ご都合のよい
時間、場所で通年ご受講いただけます。
本セミナーは、CSR経営の全体像を約5時間でわかるように設計した速習セミナ
ーで、新任のCSR責任者およびご担当者、あるいは体系立ててもう一度CSRの全
体像をとらえ直したい方にお勧めです。
CSRを推進する上で知っておくべき基礎となる知識や考え方を網羅的に習得する
とともに、世界の先端情報を把握し、戦略的にCSRを捉える能力を身につけてい
ただけるプログラムです。ぜひ多くの方にご受講いただければと思います。
■対象
企業においてCSRを推進される方(責任者、実務担当者)
・新たにCSR関連部署に配属となった方に最適です。
・CSR部門のほか、IR、経営企画、環境などの関連部門の方にもお勧めです。
※本セミナーは事業会社様のCSR推進を目的としているため、同業者
および個人等からのお申し込みは、お断りさせて頂いております。
■受講費
理解編 32,000円(税込)
※CSRコンパス/TFN会員企業様向けに割引価格があります。
詳しくはお問い合わせください。
■受講期間
原則として受講開始日より2週間
■推奨視聴環境・サンプル動画
ご利用のPC環境によっては視聴できないことがあります。
必ず下記のサンプル動画が問題なく視聴できることをご確認のうえお申し込
みください。
https://www.e-squareinc.com/education/csrseminar.html/#a1
より詳しいプログラムは、こちらをご覧ください。
https://www.e-squareinc.com/docs/CSRseminar_online2018.pdf
お申し込みは、下記のリンク先からお願いします。
https://reg34.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=nbrj-lbogqi-d068d22184a295462d3101ce7b730731
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〔3〕サービス紹介 - ESG情報開示・評価向上支援 -
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代表的なESG(環境、社会、ガバナンス)投資の指数であるFTSE4Good Index
およびFTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄見直しが6月に行われ、8社の日本
企業が新規に組み入れされました。これにより、FTSE Blossom Japan Indexの
構成銘柄は、昨年6月の151社から155社に増加しました。
(これまでの構成銘柄のうち2社は組み入れ除外、2社は上場廃止)
なお、イースクエアがご支援している企業のうち、今回組み入れを目指されて
いた2社も無事指数入りを果たしました。
昨年6月に日本の公的年金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が
ESG指数を利用したパッシブ運用を開始したことを発表して以来、日本国内で
のESG投資に対する関心も急速に高まりました。GPIFとしては、世界的に大手
年金基金などを中心とした機関投資家がESG投資に力を入れるなか、日本企業
にESG情報開示を促すことで、海外からの投資を呼び込みたいという狙いもあ
ります。
FTSEやMSCIのESG指数への構成銘柄入りは、単にそれら指数を利用するパッシブ
運用先として選ばれるということを超えて、世界的なESG投資の流れに対応する
準備ができていることを意味します。
イースクエアでは、世界の多くの機関投資家やアセットマネジャーから高い評
価を得ているESG評価機関による企業の評価結果を活用。企業が改善すべき項目
を特定し、評価の高い同業他社の情報開示事例とともに具体的な改善提案を行
っています。
具体的なアドバイスをもとに、FTSE4Good(FTSE Blossom Japan Index)、
MSCI(ジャパンESGセレクト・リーダーズ)、Sustainalyticsを始めとする
各種ESG評価にも備えていただけます。
イースクエアでは例えば以下のようなお声にお応えしています。
・様々なESG評価機関から連絡があるが、その重要性や優先して対応すべきもの
の判断がつかない。
・個々のESG評価に対応してきたが、統合して対策を検討することで、効率的な
対応を行っていきたい。
・自社のESG評価を改善し、指数入りしたい。
・CSR報告書/統合レポートを作成する際に、ESG評価を高める開示内容にして
いきたい。
・ESG評価対応を通して自社のCSR取り組みを体系的に見直し、今後の行動計画
を検討していきたい。
詳しくはお気軽にお問い合わせください。
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〔4〕TCFD事務局、TCFD最終提言への支持企業を募集
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金融安定理事会(FSB)の下で組織され、気候変動リスクに関する情報開示を
企業に求めるTCFD(気候関連財務ディスクロージャータスクフォース)の重要
性が高まりつつあります。
国内においても、金融庁は既存の枠組みを活用し、環境省と経済産業省は研究
会を立ち上げるなど、TCFDの重要性を認識して企業の取り組みを後押ししてい
ます。
TCFD事務局では、2017年6月に公表されたTCFDの最終提言を支持する企業を募っ
ています。すでに全世界で280社以上の組織から賛同があるとのことですが、
500社を目標にしてさらに賛同企業の募集に力を入れているそうです。まだ賛
同表明されていない企業様はぜひご検討ください。
詳しくは、こちらのWebサイトをご覧ください。
https://www.e-squareinc.com/news/2018/06/tcfd.html
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【編集後記】
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今日からケニア出張です。前号のメールマガジンでご紹介したとおり、ケニア
では、ビニール袋の使用、製造、販売、輸入を禁止する法律が昨年8月28日に
施行されたばかりです。違反した場合、最大4年間の禁錮刑か最高4万ドルの罰
金が科されるという世界一厳しいビニール袋規制です。施行から10か月が経と
うとしていますが、ビニール袋規制のせいで経済が停滞したとか、日常生活に
問題が生じたという話は聞きません。以前はビニール袋が散乱していた街角は
だいぶきれいになりました。川を通って海に流れ込むビニール袋もだいぶ減っ
たことでしょう。
ケニアの東隣、ソマリアの一部を実効支配するイスラム過激派アルシャバーブ
が、環境保全を理由に住民に対してビニール袋の使用を禁じるというニュース
も最近ありました。
翻って日本では、年間300億枚もの使い捨てのレジ袋が使用されているそうです。
中川環境大臣は今年3月に、プラスチックによる海洋汚染について「我が国に
おける重要な課題であるとともに、世界が連携して取り組むべき地球規模の課
題」と述べるとともに、使い捨てレジ袋が「将来的に禁止や有料化に向かうこ
とに期待したい」と述べています。
ビニール袋やプラスチックのなれの果て、海に漂う微細なマイクロプラスチッ
クが生態系や人間の健康に与える影響が取り沙汰されています。マイクロプラ
スチックは魚介類だけではなく、海水から作られる食用塩にも含まれていて、
私たちは知らないうちに細かなプラスチック片を体内に取り込んでいます。
その一方、6月上旬にカナダで開催されたG7サミットでは、海のプラスチックご
みを減らすための数値目標を盛り込んだ文書に、日本と米国だけが署名しなか
ったことが話題になりました。
プラスチックごみの世界最大の排出源であるアジアに位置し、海の恩恵を享受
してきた日本こそ、この問題に率先して取り組むべきだと思いますが、現実は
そうなっていないのが何とも残念です。今後の変化に期待します。(柳田)
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