2021年3月 9日

国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の持続可能なブルーエコノミー金融イニシアチブ(SBE:Sustainable Blue Economy Finance Initiative)が、持続可能な海洋経済のためのファイナンスに関する金融機関向けガイドを発行した。

「潮流を変える:持続可能な海洋の回復へのファイナンスの方法:金融機関向け実践的ガイド(仮訳)(Turning the Tide: How to finance a sustainable ocean recovery: A practical guide for financial institutions)」 と題するこのガイドでは、銀行、保険業者、投資家が海洋セクターの企業やプロジェクトに資金を提供する際に、環境や社会に対するリスクとインパクトをいかに回避・緩和すべきかを示すとともに、さまざまな機会についても説明している。

海洋セクターでは、民間ファイナンスと特に関係の深い5つの分野(海産食品、海運業、港湾業、沿岸・海洋ツーリズム、海洋再生可能エネルギー(洋上風力等))が取り上げられている。海洋セクターにおけるファイナンスの方法についての提言もまとめられており、金融セクターの意思決定者がただちに行動を起こせるようになっている。このガイドと提言は国連環境計画のWebサイトからダウンロードすることができる。

海洋は地球表面の大部分を占め、地球上の97%の水を保有しており、OECDによれば、ブルーエコノミーは2030年までに3兆ドルにのぼると予測されている。しかしながら、海洋の健全性が汚染、自然損失及び気候変動という3つの危機に瀕しており、報告書は全ての関連セクターが持続可能な道筋に向け迅速に舵を切る必要があるとの警鐘を鳴らしている。

海洋の健全性について、新たな調査報告書も話題を呼んでいる。科学誌のネイチャー・ジオサイエンスによれば、地球の主要な海洋循環システムのひとつである、AMOC(大西洋の表層で北上し、深層で南下する南北循環)は気候に多大な影響を与えているが、過去の統計にさかのぼって分析した結果、19世紀初期にAMOCの機能に弱体化傾向が見られたという。そして、20世紀半ばに急速にその傾向が確認され、ここ数十年で最も弱体化した状態を招き、気候変動を一層加速する可能性があるという。