2018年6月20日

国連は、「持続可能な開発目標(SDGs)報告書2018(The Sustainable Development Goals Report 2018)」を発表した。本報告書は、急激な気候変動、紛争、不平等、貧困、飢餓と急速な都市化が、各国の目標達成への取り組みの前に立ちはだかっているとし、17目標ごとにSDGs達成に向けた進捗状況をまとめている。各目標の進捗状況を、要約より一部抜粋し、以下に記述する。

SDG 1(貧困撲滅):極度の貧困率は対1990年で3分の1に低下したものの、極度の貧困状態にあるとみなされる1日1ドル90セント未満で暮らす人々は依然として7億8,300万人を超える。

SDG 2(飢餓撲滅):世界の飢餓は長く減少傾向にあったが、主として紛争や干ばつ、気候変動関連の災害により、食料不安を抱える人々の数は10年以上ぶりに現在再び増加に転じている(2015年は7億7,700万人だったのに対し、2016年は8億1,500万人へと増大)。

SDG 3(健康と福祉):全世界の5歳未満の幼児死亡率は、2000年から2016年にかけて47%低下、最も大きな健康上の課題を抱える地域でも幼児と妊産婦死亡率には大幅な前進が見られるとしている。他方で2030年までに全世界でマラリアを撲滅する目処は立っておらず、2016年のマラリア患者数は2013年を上回っている。

SDG 4(教育):幼児と思春期の子どもの過半数は、最低限の読み書き計算能力を身に着けていない。

SDG 5(男女平等):児童婚は世界中で引き続き減少傾向にある。南アジアでは、女児が子どものうちに結婚するリスクが2007年から2017年で40%以上低下した。

SDG 6(水と衛生):2015年時点で、10人に3人が安全な飲料水にアクセスがなく、10人に6人は安全な衛生サービスを利用できない状況下にある。

SDG 7(手頃でクリーンなエネルギー):後発開発途上国では、電力を利用できる国民の割合が2000年から2016年にかけ倍以上に伸び、電力にアクセスがない人数が象徴的な数字である10億人を下回った。

SDG 8(働き甲斐と経済成長):全世界で労働生産性が上昇し、失業率は低下しているが、若年失業率は成人の3倍に上る。

SDG 9(産業・イノベーションとインフラ):全世界の炭素強度は、2000年から2015年にかけて、付加価値1ドルあたり二酸化炭素換算(kgCO2/USD)で、0.38キログラムから0.31キログラムへと19%の低下を示している。

SDG 10(不平等是正):2010年から2016年にかけ、データが入手できる94カ国のうち60カ国で、最貧層40%の所得が国民全体の所得よりも急速に増えている。

SDG 11(都市・居住地):都市住民の10人に9人は、汚染された空気を吸っている。

SDG 12(責任ある消費と生産):2018年までに、計108カ国が持続可能な消費と生産に関する国内政策とイニシアチブを策定。

SDG 13(気候変動対策):2017年時点で、災害起因の経済的損失は3,000億ドルを超え、近年でも稀に見る大きな損失となっている。また、ここ5年間の地球の平均気温も過去最高となっている。

SDG 14(海の豊かさ):保護を受ける海洋生物多様性水域は広がり、同水域は2000年の30%から44%へと拡大。

SDG 15(陸の豊かさ):土壌劣化による生産性の低下傾向が続き、10億人以上の生活が脅かされている。

SDG 16(平和と公正):全世界で、有罪判決を受けないまま拘束されている受刑者の割合は、過去10年間でほぼ横ばいである(2003年から2005年の32%に対し、2014年から2016年は31%)。

SDG 17(パートナーシップ):2016年時点で、固定系高速ブロードバンドが利用可能な人口の割合は、開発途上国が6%に対し、先進国では24%。

尚、国連総会は本年5月に国連の組織改革を承認する採択を実施、各国に国連の代表(Resident Coordinators)を配置することを決定した。国連と各国政府をつなぐ連携機能強化により、SDGs目標達成が加速することが期待されている。