2022年4月11日

国連の責任投資原則(PRI)は、グランサム気候変動環境研究所のニック・ロビンス教授による報告書「公正な移行:不可避の政策対応を形成する(仮訳)(The Just Transition: Shaping the delivery of the Inevitable Policy Response)」を発行。公正な移行(Just Transition)が、炭素価格、クリーンエネルギー、化石燃料の段階的削減、EV、農業・土地利用などの気候政策に重要な役割を果たしていることを示すとともに、ウクライナ危機はエネルギーシステムの脆弱性を露わにしたと指摘する。

公正な移行は、世界の気候変動対策の重要な戦略と捉えられている。関連する社会的リスクへの懸念を緩和し、すべての人々のためのディーセント・ワークの創出、社会的包摂、貧困撲滅などの社会的機会を実現することで、労働者、コミュニティ、消費者のニーズに応え、ネットゼロ経済への移行を加速させることができる。2021年の第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、特に化石燃料の段階的な廃止とクリーンエネルギーの拡大において、公正な移行が重要な要因とされた。

報告書では、公正な移行をいかに気候政策に組み込むかは、不可避の政策対応(Inevitable Policy Response)の予測の重要な要因となる。移行政策の負担・利益の分配の側面について予測し対処すれば政策が成功する可能性が高まり、2050年ネットゼロ経済達成の成否を分ける可能性があるとしている。また、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な危機は、エネルギー安全保障についても化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を促進する大きな要因となっていること、現在のエネルギーシステムの社会的脆弱性を浮き彫りにしたとしている。