2015年7月27日


米国務省は「人身売買に関する報告書2015(仮訳)(Trafficking in Persons Report 2015)」を公開した。

米国の人身売買被害者保護法(TVPA:Trafficking Victims Protection Act)のもと、年次で発行されている同報告書は、米国政府が他国政府に人身売買対策をはたらきかけるための重要な外交ツールとして活用されており、世界で最も包括的な人身売買に関する国家の取り組みをまとめた情報源にもなっている。

米国政府は、今回の報告書では、特に世界市場における人身売買について強調したとしている。労働者が職を探す際の隠れたリスク、政府や企業が人身売買防止に向けてできること(グローバルサプライチェーンでの透明性確保に対する要請も含む)についてハイライトしている。

同報告書では、世界180余りの国と地域について、4段階の評価を行っている。評価では、各国政府の抱える課題の大きさよりも、人身売買に対する政府の取り組みの広がりの方が考慮されているという。最低ランクの評価となった場合には、米国政府は二国間支援の制限の対象となりうるとしている。今回は、北朝鮮、リビア、ロシア、南スーダン、シリア、タイなど23ヶ国が最低ランクの評価となっている。

日本は前回同様、上位から2番目の第2階層(最低基準の遵守が十分ではないが改善努力をしている)と評価された。外国人技能実習制度で起きている強制労働や、女子高生の援助交際などに言及されている。またG7唯一、国連の人身取引に関する議定書(2000 UN TIP Protocol)を締結していない国であることも引き続き指摘されている。

今回の報告書では、マレーシアの評価が、昨年の最低ランクから1段階引き上げられており、メディアや人権関連のNGO等から、TPP交渉をはじめとした政治的な思惑があるのではとの指摘も出ている。