ムーディーズ、気候変動関連リスクが信用格付に及ぼす影響を分析
米国の格付け会社大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、「環境リスク:ムーディーズ、パリ協定に合致する排出量削減シナリオに基づく低炭素社会移行リスクを分析へ(仮訳)(Environmental Risks: Moody's To Analyse Carbon Transition Risk Based On Emissions Reduction Scenario Consistent with Paris Agreement)」と題するレポートを発表した。パリ協定に合致した排出削減シナリオをベースに低炭素社会への移行が信用格付に与えるリスクを評価する。具体的には、2016年4月22日のパリ協定署名に際して174カ国が提出している炭素排出量削減目標が実施された場合の炭素輩出予測をベースとして中核シナリオを描く。このシナリオはパリ協定で合意された「世界平均気温上昇幅を摂氏2度未満に抑える」という目標を達成するには不十分だが、現在の各国政府の政策公約や技術トレンドを考慮すれば、中核シナリオとして妥当性が高いと説明している。環境リスクは政策実施状況や技術革新のペースなど不確実要素に影響される部分が大きいため、摂氏2度目標達成シナリオや現状維持シナリオ、国や地域レベルで妥当と考えられる代替シナリオについても検討し、必要に応じて中核シナリオを修正していくという。
また、同レポートとは別に、ムーディーズでは温室効果ガス(GHG)削減ペースが同シナリオより遅い場合に生じる環境リスクなど、気候変動がもたらす直接的な危険が信用に与える影響についても考慮している。しかし、温暖化によるリスクの性質、可能性、深刻度などがまだ明確でなく、時間軸も非常に長期的であることから、ほとんどの格付けにはこうした直接的な危険を反映させていない。気候変動や低炭素社会移行が国家・地域の債権にもたらすリスクについては、個別のレポートを発行する計画。