2016年5月11日

国際通貨基金(IMF)は、世界における汚職による悪影響を分析した報告書「汚職:損失と軽減策(仮訳)(Corruption: Costs and Mitigating Strategies)」を発表した。同報告書は、汚職は予算・金融政策の実施を妨げ、金融への監視能力を弱め、最終的には包括的な成長を阻害すると分析している。近年汚職による損失額は年間1.5兆-2兆ドル(世界のGDP総額の約2%)にのぼると推定される。

同報告書は汚職による経済発展への影響と、汚職の回避策を以下のように分析している。

・汚職による経済発展への影響
まずコンプライアンス文化が損なわれることで租税回避が横行し、政府の収益力と基幹的な機能の遂行力が弱まる。また、公共の調達費用がかさむことで、公共支出の量と質が低下する。税収の低下により、政府は中央銀行の資金供給に頼るようになり、国内にインフレ・バイアスがかかる。これと同時に金融システムの監視機能と安定性はさらに弱まることとなる。

・汚職の回避策
透明性が前提条件であり、各国は財政及び金融の透明性に関する国際的基準を取り入れる必要がある。フリー・プレス(言論の自由)も重要な役割を果たす。法規制を強化する。但し、行き過ぎた規制は利権を生じるため避ける必要がある。規制撤廃とシステムの簡素化は反汚職に向けた戦略のコーナーストーン(基軸)となる。また、明確な法的枠組みが必要である。