2021年9月18日

米国とEUは、温室効果ガスの1種であるメタンの排出量を2030年までに2020年比で最低でも30%削減することを目指す「世界メタン誓約(仮訳)(Global Methane Pledge)」を11月に英グラスゴーで開催する国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で発表し、賛同する国々と共同行動をとると発表した。メタン削減の取り組みは、比較的容易に削減でき、コストもそれほどかからず、短期的に最も効果をあげることができる気候対策として注目されている。

先月発表の科学誌ネイチャーの記事にもあるように、地球温暖化の悪影響を避けるためにはCO2の排出削減は必須だが、メタンもCO2に次ぐ温暖化の原因物質となっているため、この対策も重要である。最新のIPCCの報告によれば、産業革命前からの気温上昇1℃のうち、約半分はメタンによるものだという。

環境NGOの環境保護基金(EDF)の調査によれば、メタンの排出源としては家畜が最大の31%、次いで石油・ガス製造が26%、そのほかに埋め立てや石炭鉱山、水田、汚水処理場などが挙げられている。家畜からのメタン排出削減には食習慣の変更など課題が大きいが、その他のセクターにおける削減はコストがかからないか、場合によっては利益を生むと想定される。

EDFの報告書によれば、既にある技術によって2030年までにメタン排出の57%が削減可能であり、世界のメタン排出の4分の1がコストをかけることなく削減可能であるという。特に石油・ガス産業は削減に必要なインフラがあるうえ、メタン漏洩を減らすことで収益増加つながるという削減のインセンティブもある。埋め立て事業者や石炭炭鉱、汚水処理などでは、メタンガスを回収して発電に使用することが可能であり、また、水田では灌漑施設や土壌管理を向上させることで排出を最小化できる。

こうした対策により、地球温暖化を2050年までに0.25℃、2100年までに0.5℃軽減することができるという。衛星の監視データによれば、特に石油・ガス業界で、比較的少数の大量排出者がメタン排出の大きな割合を占めている。

2021年3月には国連環境計画と欧州委員会が国際メタン排出観測所を設立し、メタン削減の取り組みに役立てようとしている。また、シェルやBPなど70社以上がClimate & Clean Air Coalition(各国政府、非営利組織、企業などによる国際的イニシアチブ)のもとで削減目標にコミットしている。11月の国連気候会議では、これらの取り組みをもとに新たなメタン削減のコミットメントの発表が予定されている。