2022年3月21日

オランダのESG評価機関サステナリティクスは、報告書「水関連のリスクと課題(仮訳)(Water-Related Risks and Challenges)」を公表した。本レポートは、経済や社会福利のあらゆる側面に影響をもたらし、深刻化する水不足の影響を同社の定量的な指標を用いて調査したもの。投資家が企業や国の水リスクを特定する手助けとなる内容だ。同社はSDGs目標6の「安全な水とトイレを世界中に」をはじめ、水資源管理に関するエンゲージメントに注力してきた。水リスクは気候変動や持続可能な消費といったその他のSDGsテーマにも密接に関連するという認識がある。

本報告書の主な内容は以下の通りとなっている。

・水不足は、洪水や水質の問題と並んで21世紀の水に関する主要課題の一つである。世界の人口の大部分にとって、水ストレスは2002年から2017年の間に大きく上昇しており、今後も継続する見込みである。

・全世界で2002年から2017年にかけて、水ストレスは13%、取水は4.9%、特に農業分野では15%と大幅に増加しており、水へのアクセスに懸念が高まっている。

・2030年までに、約16カ国が国家レベルで、再補充できない帯水層や表層水から、持続可能ではない取水方法が行われると予想される。

・サステナリティクスの「水指標(取水量、水消費量、水消費原単位)」は、企業の水使用に関するリスクを測定するためのツールである。

・水の使用に関する情報開示を行っている企業は10社に1社に留まっているため、未開示企業の「水指標」を予測する独自のモデルを開発し、包括的な水関連リスクの情報を投資家に提供している。

・企業レベルの分析では、水消費原単位の高い企業は、「ESGリスク」「リターン」「リターンの標準偏差」「リターン下方偏差」がいずれも高いことが示された。しかし、水消費原単位とリスク調整後リターンとの関連は弱い。

・国別分析では、水ストレスは水利用効率と逆相関の関係にある。

・水利用効率は、人口が少なく、灌漑された耕作地の割合が低く、一人当たりの総取水量が少なく、開発指標が高い国において高い。

・南アフリカとインドの2つの国のケーススタディで、水ストレスの増大が社会のあらゆる側面に多大な影響を及ぼすことを検証した。

・投資家は「水指標」を用いることで、水消費原単位が低い企業や、水ストレスが低い国を特定することができる。水ストレスを減らすことは、ESGリスクを減らすことと密接に関連することが明らかになった。


※水ストレスとは、水需給に関するひっ迫の程度を指す。水ストレス下にある状態か否かの判断には、いくつかの指標が存在するが、国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書2006」においては、年間一人当たりの水使用量が1,700立方メートルを下回る場合を、水ストレスにさらされている状態として定義している。(CSRコンパス CSR用語集より)