2018年11月12日

英国に拠点をおき、投資家、市民社会組織、欧州各国政府の支援のもとに活動する非営利団体である、企業の人権ベンチマーク(CHRB:Corporate Human Rights Benchmark)が、2018年の調査結果を発表した。本調査は、採取産業、農業、衣類・履物産業に属する大手企業101社を対象に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」にもとづく100の指標に照らして評価し、ランク付けするもの。強制労働、人権活動家の保護、生活賃金の支払い等に関する公的に入手可能な情報にもとづき、最高スコアを100%として各社の採点が行われた。

主な調査結果として、企業の4割が自社のサプライチェーンにおける人権課題の特定もしくは人権課題を改善させている証拠をまったく示さなかったという点が挙げられる。全体の平均は調査初年である昨年の18%からは改善したものの、依然27%と容認しがたいレベルにとどまり、3分の2の企業が30%未満のスコアだった。

最も高評価だったのはアディダス(スコア80-90%)で、これにリオ・ティント、BHPビリトン(いずれもスコア70-80%)が続き、その次がM&Sとユニリーバ等の5社(スコア60-70%)であった。一方、最下位グループ(スコア0-10%)は、プラダ、スターバックス、クラフト・ハインツ等の27社だった。なお日本企業のスコアは、ファーストリテイリングが20-30%、イオンが10-20%だった。

CHRBのインディペンデント・ダイレクター兼CHRB調査手法委員会の共同主任であるMargaret Wachenfeldは、「企業が人権への尊重を明確に示さないならば、各国政府が介入し、人権保護のための厳格な法律を制定することが必要となろう」とコメントした。CHRBは企業に人権パフォーマンスの改善を呼びかけるとともに、投資家に対しても企業に改善を促すよう求めた。これを受けて、3社合計の運用資産総額1兆ドルを超えるアビバ(Aviva)、APG、ノルデア(Nordea)は、投資決定に今回のベンチマークを活用すると発表した。