2019年6月 4日

企業の環境に関する情報開示を促進している国際NGOのCDPは、報告書「世界の気候変動分析2018年版(仮訳)(Global Climate Change Analysis 2018)」を公表した。本報告書では、2018年にCDPへ回答した世界的大企業を含む6,939社の情報を基に、気候変動に関するリスクと機会が分析されている。また、CDPはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とも協調して同分析の実施や企業への情報開示を促しており、企業がTCFD提言を取り入れた情報開示を行うための支援にもつながっている。

同報告書の概要は、以下の通りである。

・世界大手企業215社(総資産、約17兆米ドル)は、今後5年間で1兆米ドルの資産が気候変動リスクにさらされる可能性を示唆した。

・座礁資産などにより2,500億米ドルの損失が発生する可能性がある。低炭素社会への転換等を背景に、化石燃料関連の資産から利益が得られなくなる事態を指摘している。

・電気自動車に代表されるような、低ガス排出製品や関連サービス、消費者の嗜好の変化などを受け、気候変動に関連して2.1兆米ドル相当のビジネスチャンスが生まれるという試算がある。

・持続可能な気候変動関連のビジネスから派生しうるビジネスチャンスは2.1兆米ドルと試算されており、それらを生み出すための投資費用3,110億米ドルの7倍に相当する。よって、投資家やステークホルダーは、世界的大企業が気候変動に対応した商品やサービスへ大きく舵を切るであろうことを想定すべきである。

・金融業界に身を置く企業にとって、最も収益を得られる可能性がある分野は今後新しく登場する持続可能な商品と関連サービス(1.2兆米ドル)である。次に、製造(3,380億米ドル)、サービス(1,490億米ドル)、化石燃料(1,410億米ドル)、飲料と畜産業(1,060億米ドル)と続くことが予想されている。