2019年8月29日

世界資源研究所(WRI)は、デンマークで開催された世界食料サミットで「食品ロスと廃棄物の削減:グローバル行動アジェンダの設定(仮訳)(Reducing Food Loss and Waste: Setting a Global Action Agenda)」と題した報告書を発表した。同報告書は、ロックフェラー財団から支援を受け、国連環境計画(UNEP)、自然資源防衛協議会(NRDC)、アイオワ州立大学等の大学・研究機関のほか、世界銀行、英国のNGOであるWRAP(Waste and Resources Action Programme)などと共同でWRIが作成した。

同報告書によれば、世界で生産された食品の3分の1近くが毎年食べられないまま廃棄されている。これは世界全体で9,400億ドルに相当し、そして地球の温室効果ガス排出量の8%に該当する。他方、現在9人に1人が栄養不足の状態にあるという。同報告書は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3、「2030年までに食品廃棄物を半減させ、食品ロスを減少させる」の達成を目指して設立されたマルチステークホルダー組織「チャンピオンズ12.3(Champions12.3)」の、グローバルな行動を求める動きに呼応するもの。

3本の柱からなる行動アジェンダを提言している。

1. 政府と企業は、「目標設定 - 測定 - 行動」のアプローチをとること
2. 食品サプライチェーンに関わるすべての組織は、セクターごとに特定されるやるべきことリストの取り組みを即時開始する(例:市場に出荷できない農作物や副産物に付加価値をつける食品加工工場を農場の近くに作る)
3. 政府や産業界のリーダーは、各セクターの行動による影響を拡大させ、ペースを加速させるための10の「拡大のための介入」を推進する(例:食品ロス・廃棄物削減のための国家政策の策定や消費者の社会規範の変革など)

同報告書によると、食品ロスと廃棄物を半減することができれば、2050年に必要となる食糧と2010年の食糧とのギャップを20%以上縮小することが可能となり、2010年から2050年までの間にアルゼンチンの面積ほどの自然生態系が守られている土地を農業用地に変更しなくても済むこととなる。また、2050年までに日本のエネルギー関連および産業関連の排出量に等しい年間1.5ギガトンの二酸化炭素相当の温室効果ガスを削減できるなど、多大な便益がもたらされる。