2019年3月11日

国連環境計画(UNEP)は、ナイロビで開催された第4回国連環境総会において、廃プラスチックの海洋汚染問題に関する3つの報告書を公表した。

1つ目の報告書「プラスチックと浅瀬のサンゴ礁(仮訳)(Plastics and Shallow Water Coral Reefs)」では、世界のサンゴ礁に及ぼしている廃プラの影響を科学的視点で捉えつつ、政策担当者に向け、影響を抑えるためのアドバイスがまとめられている。本報告書によると、全世界の海洋を漂う廃棄物の大半(60-80%)を廃プラが占めており、特に沿岸やサンゴ礁の生息環境に廃棄物が集中している。既に800以上の海洋生物が、廃プラの飲み込みやもつれ、或いは生息環境の変化などによって影響を受けているという。

2つ目の報告書「海洋での廃プラとマイクロ・プラスチックのモニタリングと評価のためのガイドライン(仮訳)(Guidelines for the monitoring and assessment of plastic litter and microplastics in the ocean)」は、汚染の分布等を報告する国際的な基準がまだ存在していないことを受け、まとめられたもの。海洋環境のモニタリングに不慣れな組織には特に有用であり、本ガイドラインを共有することで全体の課題把握が可能となり、廃棄物削減への対策が立てやすくなることが期待されている。また、本報告書では東日本大震災に伴って発生した大量の海洋廃棄物に関する分析も取り上げられている。

3つ目の報告書「海洋と沿岸のエコシステム管理に係るジェンダー・メインストリーミング(※)(仮訳)(Gender Mainstreaming in the Management of the Marine and Coastal Ecosystems)」では、ジェンダーの観点から海洋や沿岸の環境保全を論じている。海洋関連の廃棄物管理、漁業、養殖や加工品生産において、女性が果たしてきた役割は、調査や経営、政策面に至るまで歴史的に無視もしくは軽視されてきたこと、また、男性との相違点を指摘しつつ、女性や社会的弱者が実践している各地の取り組み例等を紹介している。

(※)男女平等の考え方を政策や仕組みに取り入れること

尚、2017 年のダボス会議を機に、プラスチック分野のサーキュラー・エコノミー推進を目的とする企業イニシアチブ「新プラスチック・エコノミー」を設立したエレン・マッカーサー財団は、国連環境計画と共同で、報告書「新プラスチック・エコノミー グローバルコミットメント2019春(New Plastics Economy Global Commitment Spring 2019)」を取りまとめた。廃プラ問題に立ち向かうべく、官民双方の取り組みを紹介している。