2018年3月 8日

責任投資原則(PRI)は、世界自然保護基金(WWF)と共同で「水リスクに対するレジリエンスを培う:農業サプライチェーンに関する投資家のためのガイド(仮訳)(Growing water risk resilience: An investor guide on agricultural supply chains)」と題する新しい報告書を発表した。機関投資家は投資先企業を通じて水関連リスクの影響を受ける可能性があり、特に食品・飲料や衣料など、世界最大の水使用産業である農業に直接またはサプライチェーンを通じて間接的に依存する産業分野の企業は潜在的に大きな水リスクを抱えている。

気候変動の影響が拡大する一方で淡水の需要が増加しており、投資家がさらされる水リスクのさらなる増大が見込まれる。こうしたリスクの軽減に向けた取り組みを行うとともに、水に関する良いスチュワードシップを実践する企業は、株主に新たな価値を提供することができる。

同ガイドは、投資先企業のサプライチェーンに由来する水リスクについて説明し、投資家が水リスクに関して企業に働きかける必要性を明確化し、対話の枠組みとして以下の4項目を示す。
・水意識を培い、水に与える影響や水リスクについて啓蒙
・企業内およびサプライチェーンでの水リスク対策を促進
・他の水ステークホルダーとの共同行動を奨励
・法規・政策等の水ガバナンスに影響を与える

同ガイドは4項目それぞれについて、投資家が企業の評価を行うための指標や企業への質問例などを提供し、食品、飲料、アパレル企業等に対して農業サプライチェーンの水リスク軽減対策を実行するよう促している。また、ケーススタディでは、ファンダメンタルズ分析に水リスクデータを活用する方法について紹介している。

PRI は2014年に農業サプライチェーンの水リスクに関する40以上の投資家と32の企業が参加するエンゲージメント活動を開始しているが、同ガイドはこれによって得られた成果や教訓についてもまとめている。

一方、そのほかにも水に関する取り組み推進の動きは広がっている。2018年2月には、グローバル・ウォーター・パートナーシップ(GWP)が、水資源管理向上に貢献してきた成果を、オンライン上でインタラクティブマップとして公開している。GWPは、水資源管理に関わる3,000以上のパートナー組織から構成されるネットワーク組織で、設立から約20年の間に、水のガバナンス向上に関する400を超える成果に良い影響を与えてきたという。成果としては、水に関する政策、越境管理に関する合意、投資戦略、法規制強化、制度改革などを挙げている。